暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
Alicization
〜終わりと始まりの前奏〜
雨気
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の基地には数限りなくいるが、深く踏み入った事情だとまた話は変わってくる。

「……って、そういやぁまたお前ンとこがやらかしたみたいだぜ?」

「ああん?なんだ、今度は何やった?また空薬莢拾い集めてたとかか?」

「知らん。詳しくは警備兵にでも訊いてこい。ちなみに今の当直はラグだ」

「アイツかよ……」

内職にも拘らず筋肉質なアレックスと比べ、警備兵という地元住民と接触もするハードな仕事にも拘らず肥満体形な黒人兵士を思い浮かべ、思わずデオドランドはため息をつく。

あのデブ、ロリコンのケがあるから、ガキどもなら顔パスで通しているのかもしれない。訓練場とはいえ、仮にも軍事基地だろうここは。

「ッチ、りょーかい。着替えたら後で行くよ」

「はいよ。……あぁ、午後から降りそうだから傘もな」

いつものお節介に手を振りながら、デオドランドは空になった缶を自販機横のゴミ箱に通り過ぎ様に押し付ける。

確かにその言葉通り、汗伝う肢体を冷やしていく風が微かに湿気っていた。さすがに季節が季節なだけに陽炎まではないが、G地区のヘリパッドへ向かうオスプレイのローター音が、やけに鈍く耳に届く気がする。

自然の中で作業することの多い農家や猟師などは、自然と天候の移り変わりを予測する力がつく。といっても、別に超能力の類などではなく、天気が移ろう前兆の現象―――たとえば気圧の高低化や湿気の有無など―――に知らず知らずのうちに目端が利くようになるのである。

そしてこれは、一見関係のなさそうな軍人にも言える。

仕事柄、ジャングルの奥地での工作作戦など何日にも渡って自然と同化せねばならないような任務もあるため、むしろそのような力は本業の農家などより必須条件になるのだ。

そして、経験則からくる天気予報は雨の気配を確実に知らせていた。

思わず天を仰ぎ、かざした腕の隙間から中天を見上げたデオドランドは、目元を苛立たしげに歪めた。

「……ヤんなる天気だ」










「――――違う。欧州(EU)を足蹴にし、アメリカに取り入る……も違うか」

鹿威しの音が鳴り響く。

見渡す限りの畳張り。だだっ広いその和室の上座奥に一人、齢以上の年輪をその顔に刻む老人が座っていた。机はない。それらが邪魔だと言外に言い張るように、幾重にも広げられた紙束をその老人は凝視していた。

老人とはいえ、枯れたような雰囲気はない。ギョロギョロと縦横無尽に紙面の上を走る眼光が、鮮烈で凄烈すぎるのがその一因か。

「中東の研究所は放棄されている。……中東は完全に《捨て》の体勢。EUやオセアニアの可能性は低い……エジプトか?」

幾重にも重なる紙は、報告書。

そのほとんどが手書きだというところに、老人
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