193部分:第十四話 夏の終わりにその十一
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第十四話 夏の終わりにその十一
「つまり礼儀正しく。女の子を大事にしろってことだな」
「そのうえでアタックしなさい。それで月美ちゃん」
「は、はい」
「この馬鹿息子御願いね」
言葉が笑っていた。
「変なことしたら遠慮なくひっぱたいていいから」
「ひっぱたくって」
「男っていうのは女の子が引っ張っていかないと駄目なところがあるから」
月美はこう言うのだった。
「だからね。御願いね」
「そうなんですか」
「女は太陽、男は月よ」
日本神話の話である。何故か日本でだけこうなっている。太陽は国旗にも使われている日本の象徴でもあるがそれは女性ということになるのだ。
「だからなのよ」
「女の子が太陽なんですか」
「そういうこと。じゃあお日様として御願いね」
「陽太郎君をですか」
「こんなのだけれどね」
「何か俺って」
陽太郎は二人の話を聞きながらいぶかしむ顔で言った。
「無茶苦茶馬鹿みたいだな」
「いえ、そんなことは」
「自分を馬鹿だと思っておきなさい」
月美はフォローしようとするが母の言葉はこんなものだった。
「いいわね」
「馬鹿って思うのかよ」
「その方が何かとやりやすいのよ。利口って思うよりはね」
「賢いより馬鹿の方がいいのかよ」
「世の中はそういうものなのよ」
今の陽太郎にはわからない言葉だった。しかしそれでも母は言ったのである。
「この言葉覚えておきなさい。それじゃあね」
「ああ、今からな」
「行って来なさい」
こんな話をしてだ。そのうえで外に向かう。そうして陽太郎が月美を案内した場所は。
波止場だった。そこに二人で来たのだ。コンクリートの波止場の左右には海が広がっている。そして前にはもう赤くなり海に落ちようとしている太陽があった。
その海も赤く照らされ銀の輝きと二色になっている。陽太郎はその海を月美に見せたのである。
そのうえでだ。彼は隣にいる月美に対して言った。
「ここなんだけれどさ」
「ここですか」
「そう、ここなんだ」
こう月美に話すのだった。
「ここを見せたくてさ」
「それで案内してくれたんですか」
「どうかな、ここ」
また月美に対して問う。
「どう思うかな」
「奇麗ですね」
月美は優しい微笑を浮かべて陽太郎の問いに答えた。
「とても」
「気に入ってもらえたかな」
「私海好きですから」
そしてこうも言った。
「それに」
「それに?」
「夕暮れも好きなんです」
微笑んでの言葉だった。
「ですから」
「気に入ってもらえたんだ」
「はい」
にこりと笑っての返答だった。
「とても」
「そう、よかったよ」
「それにですね」
月美の言葉は続く。
「何かここって」
「ここって?」
「見ているだ
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