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空に星が輝く様に
192部分:第十四話 夏の終わりにその十

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第十四話 夏の終わりにその十

「うちのお袋いつもああだから」
「いつもですか」
「妹にも何かっていうと言ってるんだよ」
「何てですか?」
「だから今みたいにさ。悪い男が言い寄ってきたらもうのしてしまえってね」
「それはまた」
 それを聞いてだ。月美は驚いた顔になってしまった。そのうえで言うのだった。
「かなり凄いですね」
「それでいい男を見つけろってさ」
「いい男をですか」
「悪い男はのしていい男をってさ」
 そうだというのである。
「それはいいけれどのしてっていうのはないよな」
「普通は言いません、よね」
「言わないよ。絶対にさ」
 それはないというのだった。
「うちのお袋だけ変わってるんだよ」
「はあ」
「だから気にしなくていいから。そんなつもりもないし」
「そうですか」
「こら、意気地なし」 
 また家の奥から声がしてきた。
「男なら積極的にいきなさい」
「変なことしたら布って言ったのは誰だよ」
「悪い男なら斬れってことよ」
 こう息子に言い返す。
「そういうことよ」
「だから何だよ、矛盾してるじゃないか」
「矛盾してないわよ」
 また言い返す母だった。
「それはね」
「矛盾してないのかよ」
「正々堂々とルールに則って押す」
 母は言ってきた。
「それが男の子なのよ」
「それがなのかよ」
「そうよ、それがなのよ」
 こう彼に告げるのだ。
「わかったわね。それは」
「何かわかったようなわからないようなていうか
「そういうか?」
「全然わからないんだけれどさ」
 むっとした顔で姿を見せない母に対して返す。
「それって」
「じゃあわかりやすく言うわね」
「ああ、それで何なんだよ」
「騎士になりなさい」
 今度の言葉はこれであった。
「いいわね。騎士になりなさい」
「騎士に?」
「そう、騎士によ」
 こう言ってきたのだった。
「騎士になりなさい」
「騎士ねえ」
「つまりナイト」
 今度は英語読みであった。あえてこれでも呼んでみせたのだ。
「ナイトになるのよ。いいわね」
「ナイトになれっていうのか」
「正々堂々と戦って女の子を尊敬してその身を守る」
 殆どアーサー王かローランの歌の話だった。
「そうしなさい、いいわね」
「何かえらく格好いいこと言うな」
「あんた剣道やってるし丁度いいじゃない」
「騎士は剣道じゃないだろ」
 陽太郎はこのことにはかなりいぶかしんで言葉を返した。
「あれって武士のやるやつだろ?騎士ならフェシングじゃないか」
「武士でも何でも女の子は大切にしなさい」
 言葉の確信だった。
「いいわね」
「ああ、わかったよ」
 陽太郎も母の言葉に頷くことは頷いた。

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