第四章
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「そうなんですが」
「ミュータントだと思ったが」
「違います」
全くと言う言葉だった。
「主人公です」
「そうか、いい出来だ」
「上手な中に下手があるからですね」
「そうだ、同人誌の最後のページに入れよう」
「わかりました」
憮然として応えたさとみだった、そして。
同人誌は好評だった、これまでの上手な漫画の最後にだ。
女子部長作成というそのイラストがありそれがこれまでの上手な漫画を引き立ててしかもそのイラストの下手さも引き立ってだった、それでだった。
同人誌はこれまでよりもさらに評判がよかった、それで部長はそのポーズで言った。
「私の狙いは正しかった」
「嬉しいですか?」
「この上なくな」
憮然としているさとみにクールに返した。
「私は満足している」
「それは何よりですね」
「下手なイラストも使い方次第だ」
「それ誉めてないですよね」
「誉めているつもりだ」
「じゃあ何で私の方見ないんですか?」
「恰好をつけてだ」
それでというのだ。
「気にするな」
「気にします、とにかく私の下手な絵がですか」
「同人誌の評判を上げたのだ」
部長の言う通りにというのだ。
「そうする」
「そうですか、しかし」
「しかし?」
「今回で終わりじゃないですね」
「流石だ、察しがいいな」
部長の返事はさとみが予想した中で最悪のものだった。
「次回も頼む」
「はい、わかりました」
さとみは憮然としたまま答えた、そしてだった。
さとみはそれからも同人誌の最後のページにイラストを描いていった、やがてそれはこの高校の漫画研究会が出す同人誌の看板にもなった。そしてさとみは何時しかこう呼ばれる様になった。
「画伯ですか」
「そうだ、君は今同人誌界隈でこう呼ばれている」
「そうなんですか」
「そうだ、インパクトに満ちたイラストだからな」
「下手でもですか」
「下手でもインパクトがある」
だからだというのだ。
「君は画伯と呼ばれる様になったのだ」
「それ自体は立派な称号なんですが」
「ではこれからも頼む」
「同人誌の最後のページにですね」
「描いてもらう、いいな」
「凄く不本意ですがそれで部の同人誌の評判になるなら」
実際に憮然として返したさとみだった。
「させてもらいます」
「そういうことでな」
「あと部長、バットで殴らせて下さい」
「それは断る」
部長は相変わらずのポーズで答えた、そしてさとみに描かせていった。さとみも嫌々ながら描いていった。画伯と呼ばれながら。
画伯 完
2018・6・23
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