21話→家族(前編)
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石にこのやりとりを眺め続けるのはバンピーである一夏の精神衛生上悪い。
何か他の場所にでも目線をずらすか。
そうして、少し目線をずらすと…………
柱の影から、気配を消してこちらを眺めている不審者がいた。
というか、姉だった。
(また何かしら、兄貴にやらかしたな)
姉は時たま、気まずい時、特に兄貴と喧嘩した時にこのような態度をとる。
(これ、俺が間に入った方が良いかな?)
そう思い、兄の方を再度眺めると、ちょうど兄は理事長との会話を終えて、帰る理事長を見送っていた。
「あにっ…………」
全部言い切る前に、不幸にも、兄のスーツから着信音が響く。
どうやら、電話らしい。
流石にこんなこと(姉の事)で中断させることではないので、
「ん?麻耶か…………いや、これから一夏俺んちにつれてくから、引き続き他の先生方がこちらにこれないようにしてくれれば大丈夫。……いつも千冬が迷惑かけてすまないな。うん、ああ、よろしく」
(千冬ねぇ…………)
断片的な会話だけで分かる。今回も気まずい千冬ねぇが、麻耶姉さんを巻き込んだのだ。
用はもう済んだらしく、兄は理事長と別れ、いつのまにかスーツに着替えていた。
「とりあえず、今日は俺んちに帰るぞ、あのアホもつれてな」
そう姉を指しながら言う兄の言葉に、一夏はコクりと頷いた。
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職員用の購買で、簡単な着替えを買い(泊まり込み等があるため、用意されているらしい)、校舎のとある角にあるエレベーターに乗る。
「兄貴、家に行くんじゃ…………」
ないの?と言う前に、エレベーターのボタン下にある鍵穴に鍵を差しこみ、引き下げる。
そのスライドした扉内にデカデカと書かれている『自宅』というボタンに、一夏は吹き出した。
「っ、何……コレ……」
不意打ちのネタに半笑いになりながら問いかけると、ニヤリと笑いながら、太郎は一夏に言葉を返した。
「その文句は、この先にいる、兎に言えば良い。」
そうして、エレベーターは向かう。
今の兄の自宅へと。
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広い、部屋多い。
兄の家を一言で言うなら、その言葉が当てはまる。
兄の話によると、面倒だからマンションの一フロアを可能な限りぶち抜きにしたという家は、下手すると迷子になるクラスである。
「っと、俺は『テレポート部屋』まで束を迎えに行くから、千冬は『子ども部屋』まで案内してやれ。さっき篠ノ之の義母さんが、寝かしつけたって言ってたから」
入り口のドアを開けた兄貴は、そう言ってすたすたと廊下の奥に一人で行ってしまった。
いや、とりあえず色々
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