第五十九話 名古屋の街その四
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「巨人はけなすチームや」
「応援するよりもですね」
「そや、巨人はアンチが多くあるべきや」
ファンよりもというのだ。
「今年も最下位やけどな」
「それでもですね」
「来年も再来年もそれからもや」
「未来永劫に」
「最下位であるべきや、今日も負けて気持ちよく寝られたんや」
それ故にというのだ。
「明日もや」
「心地よくですね」
「負けて欲しいわ、まあこっちの世界には巨人はないし」
野球自体がない、それで巨人という彼等が起きた世界において戦後日本のモラルの崩壊と腐敗と病理の象徴であるこのチームも存在しないのだ。
「それはええわ」
「そうですね、では巨人のお話はこれ位にして」
「それがしは名古屋の味はええ」
「この味は」
「そやから味噌煮込みうどんもな」
こちらの料理もというのだ。
「楽しむで」
「そうしますか」
「ああ、そしてな」
「最後はですね」
「ういろうや」
海老も食べつつの言葉だ、その天むすを。
「それも食べるで」
「そちらもですね」
「そや、たらふく食おうな」
「食えるうちに食わないとな」
英雄も言ってきた。
「さもないとな」
「戦うことも出来んしな」
「動くことさえだ」
このこと自体がというのだ。
「出来ないからな」
「そやからやな」
「今は食おう、俺も味噌煮込みうどんの後はだ」
「きし麺食うな」
「そうする」
その濃厚な味のうどんをタベツツ言った、八丁味噌で味付けされたそのうどんはその濃厚な味が実にいい。
「そして最後はな」
「ういろうやな」
「それは絶対だ」
名古屋にいるならというのだ。
「忘れてはならない」
「ういろうはいいものぜよ」
当季も笑って言ってきた。
「まっことのう」
「御前もそう思うか」
「ああ、美味いし色も華やかじゃ」
ういろうのそれがというのだ。
「白、黒、抹茶、小豆、柚子、桜とのう」
「コーヒーもあるぞ」
「この世界にもあるんか」
「ある」
こう耕平に当季に答えた。
「実はな」
「ほう、初耳ぜよ」
「堺にあった」
「あの街にか」
「コーヒーの店があった、名前は珈琲といった」
「ほう、漢字じゃのう」
「西の島から入っていてな」
それでというのだ。
「コーヒーも飲まれていた」
「ほなういろうでもか」
「この店にあるかどうかはわからないが」
「この島で作ろうと思えばか」
「作られる筈だ」
コーヒーのういろうもというのだ。
「だから白黒抹茶小豆コーヒー柚子桜とな」
「七つのういろうが全部揃うんじゃな」
「それも可能な筈だ」
「面白いぜよ、それならぜよ」
「ういろうもだな」
「この店の全部の種類を頼むぜよ」
当季は英雄に明るく笑って言った。
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