第五十九話 名古屋の街その二
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「きし麺も好きやねん、そやけどきし麺の次はな」
「味噌煮込みうどんだな」
「それも注文するわ」
そうして食べるというのだ。
「そうするわ」
「そうか、それでは俺もな」
英雄は今は味噌煮込みうどんを食べている、八丁味噌の濃厚な味が太いうどんの麺に実によく合っている。
「次はきし麺を食う」
「そうするねんな」
「そちらをな」
こう耕平に話した。
「食うとしよう」
「そやな、あと海老とか鶏も美味いな」
耕平は海老の天婦羅や鶏を野菜と一緒に煮たものも食べている、そうした料理も共に注文したのだ。
「どっちも」
「確かに」
峰夫も言う、鶏肉を食べつつ。
「これはいい味であります」
「そやろ、味がちゃうわ」
「はい、鶏も」
「海老もな」
「海老の天むすも」
峰夫はこちらも食べて言った。
「美味しいです」
「それもやな」
「いや、名古屋の料理は」
「美味いな」
「まことにであります」
こう耕平に話した。
「そう思うであります」
「幾らでも食えるわ」
「はい、しかし」
「何や?」
「いえ、耕平殿は関西生まれでありますな」
「大阪や」
そこの生まれだとだ、耕平は笑顔で答えた。
「大阪市内、東成に家あるわ」
「それでどうして名古屋の料理がお好きなのか」
「大阪の味が第一やで、けど中学の時名古屋に家族で旅行に行ってな」
「その時にでありますか」
「きし麺とか食うてな」
その名古屋料理をというのだ。
「それでやねん」
「名古屋の味に触れて」
「好きになってん」
そのきし麺を食べつつ峰夫に話した。
「そやねん」
「そうでありましたか」
「そや、名古屋の味も好きや」
こう峰夫に話した。
「そっちもな」
「成程」
「ただ東京の味はな」
峰夫はこちらの味については微妙な顔になって述べた。
「あまりな」
「お好きではないですか」
「そやねん」
そちらの味はというのだ。
「どうもな」
「やはり関西と関東では」
「味が全然ちゃうわ」
それでというのだ。
「あかんわ、それがしには」
「そうでありますか」
「特にうどんや」
これを出した耕平だった。
「あれはあかんわ」
「東京のうどんは辛いであります」
「そや、あのだだっ辛さがや」
峰夫は大阪、関西の言葉を出して述べた。
「あかん」
「どうしても西の者にはあの味は」
「あかんな」
「全くであります」
「都、京都では」
謙二は自分が住んでいた地域の味の話をした、見れば謙二もきし麺を実に美味そうにすすっている。
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