新型旗艦
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ちた。
「え。あ、久しぶりだね。行けるわけないってば、予算課が忙しいのは知っているでしょ」
珍しくも砕けた声音だった。
いつも生真面目な口調が変わるのを見て、一瞬楽し気に、しかし、続く言葉にグレッグは眉根をしかめた。
「え。ああ、うん。そうだね、まだどうするかは決まってないよ」
若干戸惑った口調、それだけでグレッグは理解できた。
と、言うよりも似たようなことは何度もあったからだ。
おそらく内容は、装甲車の整備計画がなくなったことによる浮いた予算の使い道だろう。
スーンが言ったように、その使い道は未だに決まっていない。
それをよこせと、下手に出て、あるいは上から強く言われ、今度は親しい友人を使うか。
ふざけたもんだと、グレッグは缶コーヒーをあおった。
確かに予算は浮いている。
だが、それは好き勝手に使っていいというわけではない。
使い道がないというのであれば、返すのが当然のこと。
使うにはそれなりの理由が必要だ。
それがわかっていない奴が多すぎる。
スーパーの弁当が半額になったから、余ったお金でビールでも買おうなんて、気軽に使える家庭の金ではないのだ。
上に説明して、資料を作るのは予算課だ。
グレッグは不機嫌な様子でスーンに近づいた。
「え。あ、わかった。ちょっと待って、いま変わるから」
と、そこでスーンが受話器を差し出した。
怒りが少し和らいだ。
どうやら親しい友人にお願いではなく、一応は担当を通して話をするという筋はわきまえているらしい。
もっとも、それで手心を加えることはないのだが。
「グレッグ少佐、その――マクワイルド中尉からお話ししたいことがあると」
「少し用を思い出した。後日かけると伝えて――」
「お電話です、少佐」
踵を返したグレッグは、肩に手を置かれて逃げ損ねた。
どうやら後輩への八つ当たりは自分に返ってきたようだ。
+ + +
「はい。ええ、その点は理解しておりますが、予算をあげたのは装備企画課ですし、そもそも名目上とはいえ装備の更新費用で予算を計上していましたよね。ええ、確かにそのとおりです。そこに新型の動力機関開発とは直接的には書いていません。けれど、動力機関の更新というのは装備の更新費という項目に含まれることには間違えていませんよね」
スタイナーの目の前で、アレスがすらすらと答えていく。
予算課の少佐の名前を尋ねていたことから、おそらくは相手は予算課なのだろう。
内容自体も、聞いているところで言えば、端的に装甲車の更新費用で浮いた予算を動力機関の方に使わせろということが想像できた。
確かに、その手はあったかという一方で、無理だろうとも思った。
予算課はそんなに甘いところではない。
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