新型旗艦
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電波を飛ばすし、識別信号でばれますよ。ばれるのは同じにしても、目立ちますからね。それを見て提督がそこにいると周囲に安心と、敵に畏怖を与えられるかと。まあ、能力次第ではその逆もあるかもしれませんけどね」
「それもそうだ」
肩をすくめたアレスの言い分に、スタイナーは声を出して笑った。
室内のざわめきが一瞬止まり、周囲の視線がスタイナーに集中する。
スタイナーは口を押え、至極真面目そうな表情を作った。
だが、表情を厳しいものに変え、
「新型の動力機関開発は私も必要だと思っているし、科学技術部も当初はそう考えていた。だが、そうなると予算が、な」
「予算課には相談しましたか」
「ああ。4月頃に見積もりをだしたら、担当には渋い顔をされたよ」
「相談したのは4月ですか。なら、ちょっと待ってください」
と、アレスはスタイナーの前で受話器を取り上げた。
+ + +
予算課の師走は忙しい。
いや、師走も忙しいと言えるだろう。
後方勤務本部の予算関係を一手に引き受け、それの取りまとめを行っているのだ。
だてに毎年移動したくない部署ランキングの1位を装備企画課と争っているわけではない。いや、むしろ今年の方こそひどいと言えるだろう。
来年以降に予定していた装甲車の改修計画が一気に前倒しに動いたのだ。
まさに優秀ではあるが、楽になるとは限らないといった後輩の予言通りだ。
最も仕事を増やされたからと言って、彼――予算課グレッグ少佐は――やはり忙しい部署の代名詞である装備企画課に新たに配属されたアレス・マクワイルドを恨んでいるわけではない。
汚職という罪を発見したことはすごいことであったし、こちらに協力せずに利益をむさぼるフェザーンの企業に対して有無も言わさず完全勝利を得たことは総会であった。
数年はかかるだろう仕事をわずか数か月でやり遂げた才能には頭がさがるし、何よりも自分の部署だけではなく、他の部署にも気を遣う姿は、彼がまだ士官学校を出て一年を経ていない人間だとは、とても思えなかった。
かといって、予算課の仕事が増えたことには違いがなかった。
「おい、スーン。電話が鳴ってるぞ。さっさと出ろ!」
「はい!」
同じように書類をもって走るスーン・スールズカリッターに対して、強い声を出しても問題ないはずだった。
八つ当たりかもしれないが、こんなことになるなら、もう少し早く教えておいてくれと、自分でも理不尽だなと思う怒りがあることに気づきながら、グレッグは落ち着くために購入した缶コーヒーを開けた。
「はい、予算課スールズカリッターです」
書類片手に、電話をとるスーンの姿がある。
また名前の訂正をするのだろうなと小さく笑いながら、一口飲む。
苦みを残す冷たさが喉に落
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