九匹め
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そして鍛冶屋が軒を並べ、鎚を振る。
宝石の類いを扱う怪しげな店の店主が客を手招きしている。
吟遊詩人が朗々と唱う隣では、大道芸人がジャグリングをしていた。
(わぁー…すごいなぁ…)
喧騒を見上げながら、シラヌイは呟いた。
もっともシラヌイでは「きゅー」という鳴き声しか出せないのだが。
「およ?狐だ。めずらしい」
後ろでそんな声を聞いたシラヌイは振り向いた。
「きゅー?」
そこにはローブをまとった茶髪の小柄で童顔の女がいた。
だがその豊満さはローブの上からもはっきりとわかるほどだ。
「きゅー(魔女だ)…」
「どうした?道にでも迷ったのかい?」
「きゅー…」
「じゃ、一緒に歩こうぜ?」
「きゅぅ!」
魔女はしゃがんで片手を下に向け、シラヌイに差し出した。
「きゅ?」
「肩にでも乗っておくれよ」
「きゅ!」
トントンっと手を伝って、シラヌイは魔女の肩に乗った。
足を肩の前後にたらし、腹這いの姿勢だ。
「アタシはボーデン。見ての通り魔女だ。
アンタは? ってわかるはずないか!」
「きゅ!」
シラヌイは前足を前方につき出した。
「きゅぅぅぅぅ…………きゅ!」
水が生まれ、その水は文字を形造る。
「し・ら・ぬ・い……シラヌイっていうのか?」
「きゅ!」
「よろしくなシラヌイ!」
「きゅぅぅ!」
そこでボーデン気づく。
「シラヌイ。おまえ人間か?」
「きゅ!」
「なんでこうなってるんだ?」
「きゅぅぅ…」
「んー…家出?」
「きゅ!」
「そか。なら好きにしたらいい。かく言う私も家出中みたいな物だしな」
シラヌイに邪気がないと感じたボーデンはこのまま歩く事にした。
それを近くの屋根から見下ろす別の狐が二匹。
「きゅー」
「きゅー。きゅぅー?」
「きゅぅ」
「きゅい」
何かを相談しているようだったが、それを見ていた者はカラスだけだった。
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