第16話 魔人ケッセルリンク
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楽しい時が過ぎる時間は本当に速い。
ワインも粗方飲み終えたゾロはゆっくりと立ち上がった。
「今日は感謝する。……楽しい時を過ごせた。また 頼んでも良いだろうか」
「……私を見つける事が出来れば、な」
「ふむ。……面白いな、それは。精進するとしよう。以前の私にも負けぬ様、より強く」
「人間側とすれば、それは脅威になる故に、少々複雑とも言えるな」
「何を異な事を。……君の力量は私はよく知っているつもりだ。脅威になりえる為に要する時間を考えれば、自ずと判る事だろう。無限に近い時が無ければ届かぬ領域と言うものがある」
ゾロの実力を十二分に知っているからこそ答えだ。
RA期に入り、数度 魔軍はこのゾロと相対している。そして、悉く退けている。―――その中には現魔王も含まれているのだから。
それを聞き、ゾロは軽く笑うと 身体を宙に浮かせた。
見送ろうと席を立つケッセルリンク。 その時、ある事を思い出した。
それは先の時代に、彼から聞いた事。忘れられない事。
「……君は博識だ。恐らくこの世界のどの人間よりも。だから 最後に君の意見を聞きたい。帰ろうとしているのに申し訳ないが」
「ん……? 何だ?」
ゾロは ふわりと浮かせた身体を止めた。
人1人分の宙に浮いた状態のまま、ケッセルリンクの方を向き直る。
「君は、私がいつこの世界に生まれたか、知っているのだろう?」
「……ああ。知っている」
「私が誰に仕えていたのかも、………知っている」
ケッセルリンクはゾロの目を見つめた。それに応える様にゾロは続ける。
「ああ、そうだな。……魔人ケッセルリンク。第3代魔王 スラルにより生み出されし魔人だ。……ふむ。これはそれなりに歴史を学べば 判る事だ。魔人は、それも四天王と言うのは相当有名だからな」
ゾロは少なからず疑問も浮かんだ様だ。
ケッセルリンクの出生。確かに そこまで細かな事は知る者は少ない。それは人間側も魔人側も同じであり、信憑性面においても。……が、先の大戦で魔人と人間との距離はかなり縮まったと言って良い。ケッセルリンクと同じ、スラルにより見出された魔人ガルディアとの友好になった時に、信憑性も増した。
だから、自分だけが知っている訳ではない事なのだ。それを改めて聞く。それも本人が聞く意味がよく判らなかった。だが、次の言葉で真に訊きたかった事が判った。
「……君は我が主を、どう思うだろうか。人間界で伝わっているのは、魔物界でも然程変わらない。……君の見識を、訊きたい」
主君である魔王スラル。
基本的に魔王については人間界では秘匿であり、各国に伝わる伝承を追う以外では、AL教団しか把握はしていないが、ゾロは知っている。魔王スラルを知ってい
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