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非日常なスクールライフ〜ようこそ魔術部へ〜
第72話『表と裏』
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「いや、僕は諦めないよ。こうなったら強行突破さ。僕が──生贄になるんだ」


青年がそう言った途端、大地が大きく揺らいだ。不意な揺れに足を取られ、晴登は尻餅をついてしまう。一体何が起こっているのか。

──思い起こせば、ここに"竜の祭壇"らしき物は見当たらなかった。婆やが嘘をついたはずもなく、辿り着いた結論は・・・


「まさか・・・この山自体が"竜の祭壇"…!?」

「正解だよ。起動できるのは頂上からのみだけどね」


そう言って微笑む彼の足元に、紅く光る巨大な魔法陣が浮かび上がった。それは晴登たちの足元にまで及び、頂上全体まで広がっている。


「『満月が照りし深夜にて、生贄を捧げ復活を求めよ。さすれば邪炎竜、その望みに答えん』」

「やはりそれを知って・・・」

「一つ前の戦争での戦果だよ。これで僕はようやくイグニスを復活させられる」ヴォン


魔法陣が一段と眩く光り輝く。そのせいか、月光も一層怪しい輝きを増したように思えた。大地の揺れは収まる気配はなく、威力を増すばかりで立つことさえも難しい。


「やめるんじゃ!」

「僕は僕の信じた道を行く。今まで世話になったね──」


その瞬間である。

今にも割れそうだった大地から赤い鱗の生えた巨大な手が這い出て、青年の身体をがっしりと掴んだのだ。その掌は青年の身体を握るほど大きく、それに続く腕の太さも大木の比ではない。肘と思われる関節から鋭い爪の先までですら、晴登たちが見上げるほどの大きさだった。


「まさかこれが・・・」

「復活しおったか、イグニス…!」


地割れが起き、その隙間から巨大な生物がゆっくりと這い出てくる。その瞬間が絶望の幕開けであり、世界の終焉を意味した。ひしひしと感じる重圧に押し潰されそうになりながら、晴登は大きく息を吐く。
そして圧倒的な存在のその生物は、右手で掴んでいた魔王を一呑みにした。

紅い瞳をギラギラとさせる竜──イグニスは、ついにその姿を現したのだ。



「おーい、今の揺れは一体・・・って、何じゃこりゃ!?」


突如背後から聞こえた快活な声の正体は、振り返らずともわかる。危機的状況ではあるが、晴登は笑みを浮かべながら振り返って──


「・・・って部長、どうしたんですかその怪我?!」

「ちょっと猫に引っかかれただけだよ! それより、これがイグニスってんじゃないだろうな…?」


ようやく後続と合流することができたが、素直に無事を喜ぶことはできなかった。終夜の左腕は赤黒く変色し、緋翼の腹部は鋭利なもので掻っ切られ、二年生らは疲弊し切っており、何よりその背中に担がれている伸太郎がピクリとも動かない。嫌な予感が脳裏を掠めるが、大丈夫だと信じる。

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