第72話『表と裏』
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い。
「だったら俺が出るまでだ!」ブォン
「君は少々面倒だね。まさか、魔法を使わないとは」ヒュ
「にしては、簡単には当たってくれねぇみてぇだな?」ブォン
「魔法だけだと思わないことだ」ヒュ
カズマの荒い一振りを次々と躱す青年。晴登からすれば太刀筋はもはや軌跡でしか見えないのだが、青年は表情一つ変えずに悠々と避けている。もはや別次元の戦いだ。
「共闘しようにも力不足。結月を救おうにもアイツが邪魔。あと少しなのに…!」
「ハルト。悔いていては前には進まん。足りないのであれば補えば良い。儂が力になろう」
「でもどうやって・・・?」
決して婆やを侮っている訳ではない。しかし、一体どのような手があるというのか。
「カズマの剣術・・・ありゃ儂が叩き込んだものじゃ。アイツが強くなれるようにと」
「それってつまり…?」
「儂も剣の使い手ということじゃよ」ジャキン
婆やは胸の谷間の中から短い鞘を取り出した。隠し場所に驚く晴登をよそに、婆やは短刀を抜くと一瞬で姿を消して、
「ふんっ!」ビュン
「おっと!」ヒュ
なんと刹那の間に青年の後ろに回り込み、短刀を振り下ろした。しかしその不意打ちすらも、青年はわかっていたかのように軽々と躱す。これでは婆やでも太刀打ちできないのではなかろうか。
だが晴登には婆やの意図がわかっていた。今、青年を婆やとカズマが相手取っている。こうなれば、彼は二人の剣撃を避けることに手一杯になるだろう。すなわち、結月の警備も甘くなる。
「そこを狙うっ!!」ダッ
「…ちっ!」ドォン
足に風を纏い、力強く大地を蹴って晴登は駆けた。もちろん、青年はその動きには目敏く気づく。婆やとカズマは邪魔をしようと立ち塞がるが、青年は二人を衝撃波で押し退け、晴登の元へと向かった。
「でも俺の方が早い…!!」ダキッ
「ハルト!」
勢いをコントロールしながら、晴登は素早く結月を抱き抱えた。その時の安心した彼女の笑顔に、晴登は無意識に頬を緩めてしまう。だが、次の一歩を踏み出そうという所で魔王の手が迫る。
「…くそっ!」ブワァァ
「だから効かないって・・・うん?」
突然、青年がとぼけた声を上げる。それもそのはず、晴登が放った風は当然魔王の力で跳ね返されたのだが、幸運にもその風が晴登らを逃がすように吹き飛ばしたのだ。
「へぇ…考えたね。僕を出し抜くとはやるじゃないか」
「え、そ…そうだ!」
「ハルト…」
青年は晴登が意図的に行ったのだと解釈したが、晴登がそこまで策士なはずもない。実はがむしゃらに風を放ったら、偶然にも逃げることに成功した
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