第一章
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正義戦士ジャスティスマン
正義サトシは普段は商店街の肉屋を経営している、店はいつも客が来てくれていて生活には困らない。
父はもう他界していて母と二人暮らしだ、その母には口癖があった。
「あんたももう一度ね」
「結婚しろっていうんだな」
「ええ、もう一度ね。そしてね」
「それはな」
どうにもとだ、サトシは母にこう返すのが常だった。
「もうちょっと待ってくれよ」
「相手がいないのかい?」
「いるにはいるよ」
それは事実だというのだ。
「俺にだって」
「それじゃあその人と結婚してだよ」
「また所帯持てっていうんだな」
「綾戸さんいい人だったし相思相愛だったのに」
前の妻のことも話すのが常だった。
「どうして別れたんだよ」
「仕方ないだろ、それは」
サトシは母に困った顔で返す、これも常だった。
「止むに止まれぬ事情があったんだから」
「私にも言えないことだね」
「そうだよ」
それでというのだ。
「別れるしかなかったんだよ」
「綾戸さんとは今も会ってるんだよね」
「いつも会ってることは会ってるよ」
それは事実という返事だった。
「実際に」
「じゃあよりを戻すとか」
「そんなの絶対に無理だよ」
サトシは母にこのことは強く否定した。
「何があっても」
「いつも会ってるのにかい?」
「そうだよ」
「綾戸さんに新しい相手がいるとか」
「いや、いないよ」
このことはサトシも知っていた。
「絶対に」
「それじゃあいいんじゃないかい?」
「よくないよ、とにかくあいつとはもう」
「よりを戻せないんだね」
「それで再婚も」
それもというのだ。
「まだ考えられないよ」
「やれやれだね」
「仕方ないだろ、ヒーローなんだから」
「ヒーロー?」
「いや、何でもないよ」
自分が正義の戦士ジャスティスマンであることは隠した、そしてだった。
サトシは肉屋として正義の戦士ジャスティスマンとして生きていた、そしてこの日もよく食うそれも脂っこい肉料理が好きな割にガリガリの身体をタイツとベルト、スカーフで包み顔は丸出しの赤モヒカン姿で戦うのだった。
彼を助けた蛙はいつも左肩にいて言ってくる。
「ジャスティスマン、今日もね」
「ああ、フォークマンズがまた出て来たからな」
「戦おう」
蛙はサトシ、今はジャスティスマンである彼に告げた。
「そしてそのうえで」
「ああ、街の平和を守ろう」
「是非共ね、しかしフォークマンズもしつこいね」
「ああ、本当にな」
サトシは蛙に苦い顔で応えた、顔は丸出しでも正体は誰にもわかっていない。一人だけは例外として。
「何度も何度もな」
「出て来てそうして」
「街の平和を乱そうとしてくるからな」
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