175部分:第十三話 家へその九
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第十三話 家へその九
「それでなんです」
「成程ねえ。何か持っているものをふんだんに使えるっていいよな」
「ふんだん、ですか」
今度は月美がわからない顔になった。その顔で陽太郎に問う。
「そうなのでしょうか」
「ふんだんだよ、それに」
「それに?」
「妹さんもそっくりなんだ」
陽太郎はここではこのことを話す。妹のことであった。
「同じ顔なんだ」
「そうなんです、そっくりで」
そしてだった。月美はここで一歩前に出た。言葉がである。
「そうだ、それだったら」
「それだったら?」
「今から呼びますね」
こんなことを言うのだった。
「それでいいですよね」
「えっ、今からって」
「はい、ここに呼びますね」
「あの、ちょっと」
「心美、ちょっと来て」
すぐに立ち上がってそのうえで扉を開けてだ。廊下のところに顔をやってそのうえでその妹を呼んだのである。そうしたというのである。
「応接間に来て。すぐにね」
「お姉ちゃん、どうしたの?」
すぐに子供の可愛らしい声が返って来た。
「何かあったの?」
「いいから来て」
月美はここでは理由を聞かなかった。
「いいからね。こっちに来て」
「うん」
返事は素直なものだった。
「それじゃあ今から行くよ」
「ええ、来て」
「わかったわ」
こうしてであった。その彼女が来たのであった。白いシャツと黄色いスカートの彼女の顔はというとだ。本当にそっくりであった。
「はじめまして」
すぐに陽太郎に対して話してきた。
「お姉ちゃんの彼女ですね」
「えっ、彼女って」
「そうですよね」
天真爛漫だがそれだけに困った問いだった。
「だからここに来たんですよね」
「それは」
「それでお姉ちゃんとは」
そして言う言葉はというとだ。
「キスとかしたんですか?」
「えっ!?」
「キ、キス!?」
この言葉にはだった。陽太郎ではなく月美もだ。目を丸くさせて口を両手で覆ってだ。そのうえで驚く様子を見せたのであった。
「あの、それは」
「心美、何てこと言うのよ」
陽太郎は驚いているだけだが月美は怒ってもいた。
「そんなのはとても」
「してる筈ないでしょ、怒るわよ」
「何で怒るの?」
心美はそう言われてもだ。目を丸くさせるだけだった。
「それで。だってキスってさ」
そしてだ。その目で言うのであった。
「普通に好きな人同士がするんじゃないの?」
「それはそうだけれど」
月美もそれは認めた。同じ丸くさせてしまっている目であってもである。姉妹のその丸くなった理由は全く違ってしまっているのである。
「けれど。そんなことは」
「じゃあキスまだなの?」
純朴なところがかえって問題だった。
「斉宮さんもお姉ちゃんも」
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