173部分:第十三話 家へその七
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第十三話 家へその七
「それで。その次の日はです」
「厄介だな」
陽太郎は少し困った顔で述べた。
「それはまた」
「けれど。可愛いですよね」
何とここでだ。月美は微笑んでこう話したのである。
「愛ちゃんのそういうところって」
「可愛いんだ」
「愛ちゃんって可愛い性格ですよね」
そしてこうも話すのだった。
「とても」
「可愛いか。そういえば茶目っ気はあるよな」
「それがいいんですよ」
また言うのであった。
「あの茶目っ気が」
「そうか。何か意地悪に思えたりもするけれどな」
「愛ちゃんは嫌いな人は最初から声をかけたり相手にしたりしませんよ」
「ああ、みたいだな」
陽太郎もそれは察してきていた。何となくではあるがだ。
「何かそんな感じかな」
「はい、それで大事な人にはです」
「ああいう感じなんだ」
「優しいんですけれど素直じゃないところがあるんです」
椎名の性格をよくわかっていた。それを窺わさせる言葉だった。
「愛ちゃんは」
「それ考えたらわかりやすい性格なんだな」
「わかりやすいですよ。いい娘ですよ」
「いい娘なあ」
「私にもよく声をかけてくれるし」
「ああ、同じ塾だったっけ」
「はい」
陽太郎のこの話にも頷く。そしてだ。
陽太郎はふと先程の話を思い出してだ。そのうえで月美に対してまた問うた。
「あのさ」
「はい?」
「椎名の通っていた塾ってあれ?やっぱりお母さんの」
「あっ、違います」
そうではないというのだった。
「別系統のです。その塾に行ってました」
「そうだったんだ」
「お母さんの塾だと色々言われるだろうってことで」
「あのお母さんが言ったとか?」
「お父さんが言ったんです」
母ではなくだ。父だというのだった。
「お父さんが」
「親父さんがなんだ」
「お父さんは八条電鉄に勤めていて」
父はそこだというのだ。八条電鉄とは関西全域に路線を持っている私鉄である。私鉄で最大の路面面積を誇っている。
「そのお父さんが。自分で塾を選べって言って」
「それで椎名と同じ塾に」
「なりました。愛ちゃんと会ったのは縁でしたけれど」
「縁かなあ」
「人と人の出会いって縁ですよ」
こう話す月美だった。
「お父さんとお母さんに言われました」
「縁かあ」
「愛ちゃんと会えたのは縁で」
そしてだった。陽太郎を見てだ。
「斉宮君に会えたのも」
「それも縁」
「いい縁ですよね」
ここまで話してにこりと笑ってみせたのだった。
「とても」
「そう言ってくれるんだ」
「何か?」
「いや、有り難う」
月美のその言葉への感謝である。
「そう言ってくれて」
「何が?」
「うん、有り難う」
また言う陽太郎だった。月美の言葉
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