第二章
[8]前話
「この髪型も」
「出来るのね」
「はい」
こう店長に答えた。
「染めるのも」
「セットだけでなく」
「はい、それもです」
出来るというのだ。
「任せて下さい」
「わかったわ、じゃあね」
「やらせてもらいます」
「雨咲ちゃんが言うのならね」
それならとだ、店長も頷いた。雨咲の腕を知っている為に。
それでだ、こう言ったのだった。
「任せるわ」
「それでは」
こうしてだった、雨咲はその客の担当になった。するとだった。
まずは髪の毛を両手に一本ずつ持ったその鋏で素早くそのキャラのセットにした。そしてそれからだった。
染める、その染める手際も見事で。
気付けばその客は自分が言ったキャラの髪型になっていた、それで客は雨咲に驚いた顔になって言った。
「あの、本当にです」
「キャラの髪型にですね」
「なっています」
興奮している口調での言葉だった。
「凄いです」
「凄いですか」
「完璧です」
そこまでだというのだ。
「あのキャラですよ」
「そうですか」
「有り難うございます」
客は深々と頭を下げてお礼を言った、緑に赤のメッシュが入った長い独特のデザインの髪型になって。
そうして店を後にした、店長は閉店してから雨咲に言った。
「キャラクターの髪型にしてくれって言ったお客様だけれど」
「あの方ですね」
「よく出来たわね」
「いえ、出来るって思って」
それでというのだ。
「言っただけで」
「けれど出来たわね」
「絶対に出来るって思いました」
「それで本当に出来たことがね」
それがというのだ。
「凄いわ」
「そうですか」
「そうよ、よくやったわね」
店長は雨咲に笑顔で答えた。
「今日も」
「出来ただけで」
「それだけなの」
「はい、出来ないこともあるので」
「髪型でも」
「その時はすいません」
「それだけなの」
「はい、出来ることがあって」
ヘアスタイル、美容師の仕事でもというのだ。
「出来ないことがあって」
「出来るって思ってなの」
「言いましたが出来てよかったです」
「だからなの」
「特にお礼は」
その大阪出身を感じさせない標準語で気の抜けた感じの声で話した。
「いいです」
「そうなのね」
「じゃあまた明日お願いします」
「ええ、ただ明日雨咲ちゃんオフよ」
「そうでしたか」
「明日は休んでね」
「そうさせてもらいます」
雨咲の口調は変わらない、気の抜けた感じだった。大仕事をしたが特にそれを誇るわけでもなくだった。いつもの調子で家に帰るのだった。
忠実に再現 完
2018・6・19
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