セランVSライナ 後編
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ンボローのため息に呼応するように、準決勝が終了を告げた。
+ + +
戦いには敗者と勝者がある。
勝者は素直に勝利を喜び、そして、敗者は。
筐体が相手も、誰もすぐには外には出てこなかった。
あと少し。
差は紙一重であって、天秤がわずかでも傾けば勝利も可能であっただろう。
だが、その紙一重が絶望的な境となって勝者と敗者を分けていた。
のろのろと最初に動き始めたのは、この艦隊の司令官であるクローラーだ。
謝罪の言葉を口にして、仲間に声をかけていく。
その足取りは非常に重い。
いや、彼だけではない。
筐体から立ち上がった者たちの中に、笑顔を浮かべているものは皆無であった。
後悔を浮かべるもの。
悔しさを滲ませるもの。
あるいは、いまだ呆然とスクリーンを見るもの。
浮かぶ表情は様々であるが、その動きは重いものだ。
わずかであったため悔しさも大きい。
この敗北をどう捉えるかだけど。
最後に、ライナ・フェアラートが姿を見せた。
どこか疲れているようではあるが、そこに感情の色は見えない。
白い肌のままに動かぬ表情がそこにはあった。
クローラーの謝罪に対して、頭を下げる。
おそらくは謝罪の言葉。
だが、周囲の落ち込みとは全く対照的な姿がそこにあった。
あのヤン・ウェンリーでさえ、負けた時は若干の苦さを残していたのだが。
「声をかけないのですか、アレス先輩」
アレスの背後から控えめな声が聞こえた。
振り返ればヘイゼル色の瞳が、どこか遠慮がちにアレスを覗き込んでいた。
それを一瞥すれば、アレスは再び視線を戻す。
仲間たちを慰めるように、静かに声をかける姿があった。
その声は至極冷静であり、的確なものだ。
どこが悪かった。
どうすればよかったか。
まるでその場で感想戦をしているかのように。
淡々と、淡々と。
一切の感情を見せずに、口にしている。
女性に対する嫉妬か、陰では氷の女王とまで言われているらしい。
だから。
「やめておく。悔しがっている姿は人には見られたくないだろうから」
「え」
短音の疑問に、アレスは首を振った。
いつも以上に冷静に努める様子に。
そして、拳を握り占める様子に。
こちらに視線を向けず、ただただ強くあろうとする様子に。
きっと大丈夫。
間違いなく彼女は強くなるだろう。
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