セランVSライナ 後編
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それは。
「残念だな」
ヤンが言葉にして、首を振った。
それにワイドボーンが同意したように頷く。
二人の様子に説明を求めるような視線をアッテンボローから向けられ、アレスは苦笑。
「あと少しという誘惑に勝てなかったのでしょうね」
動きは生まれた。
本拠地陥落まであとわずか。
時間にして五分程度であろう時間に、クローラー艦隊の背後から無傷の四学年と三学年が襲い掛かる。
本拠地に対して攻勢を仕掛けていたクローラー艦隊に逃げ場はない。
それでもなお、本拠地を落とそうとして攻撃をするのは無念であろうか。
「愚かな選択だけれど」
苦そうにヤンが小さく呟いた。
たとえ本拠地を攻略したところで、ほぼ壊滅状態の艦隊が制圧できるはずもない。
もちろん、シミュレート大会という意味では勝ちであろうが、その勝ちにはヤンは何ら喜びを見出すことはできないだろう。
何よりも。
「二学年の後方からの攻撃がなかったら、あるいは最初にセランの艦隊を追いかけていたら別だったかもしれないけれどね」
「どちらにしろ、時間切れだ」
スクリーンでは包囲を受けたクローラー艦隊が猛攻にさらされ、風前の灯火だ。
本拠地の陥落まで持たないことは、誰もが予想するところだろう。
アッテンボローの前方で三人が同じようにスクリーンを見ている。
本拠地に攻勢をかけた時点で、この展開を呼んでいたことに驚きと呆れ、そして、わずかな恐怖を感じながら、自分ならどうしていただろうと考える。
おそらく、アッテンボローは逃げただろう。
最初の奇襲で敵の五学年と一学年の艦隊は損害を受けている。
あとは後方に下がれば、有利な戦いができたはずだと。
そのことをワイドボーンに告げれば、それも一つの考え方だなと頷きを返した。
はっきりとしない言葉に、アッテンボローは口をとがらせる。
「なら、ワイドボーン少佐ならどうしたのです?」
「俺か。俺なら本拠地に攻撃をかけていた。だが、応援が来るまでに本拠地を落とせてみせた」
「何ですか、それは」
「ヤンであれば、敵の奇襲を察知しただろうし、こいつなら」
口を曲げながら、ワイドボーンはアレスを見下ろした。
顔をあげたアレスが、ワイドボーンを見る。
睨んでいるような目つきは普通であればこいつ呼ばわりされたことに怒っているかと思うが、この後輩はこの目つきが日常なのだった。
「こいつなら最初の一撃で、終わりだ。さっきも言っただろう、要は自分と部下と相手の戦力差を見て、最善となる手は変わってくる。答えが決まっているわけではないが、一対一でシミュレートしていると気づきにくいものだ。まったく、これを考えた奴は本当に性格が悪い」
「それについては、同感ですよ。先輩」
アッテ
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