第85話 後始末は自分の手でつけるのが世の中の鉄則 その5
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してはみるのだが結果は同じ。
幾ら頑張ったところで出て来ないものは出て来ない。そう言う徒労に終わるような事を世間では「無駄な努力」と言うのだから笑うに笑えない。
「うぅ・・・き、気持ち悪い・・・俺とした事が深酒した挙句二日酔いまでしてしまうとは・・・こんな醜態を主には曝せないな」
仮にもしこんな惨状を主はやてに見られようものなら確実に折檻される事間違いないだろう。
まぁ、主の折檻であれば守護騎士としてはご褒美とも捉えられない事もないのだが。
嫌、最悪守護騎士の任を解かれた挙句闇の書の肥やしにされてしまうのでは―――
そう考えると一気に顔色が青ざめていく。
守護騎士にとって騎士の任を解かれるのは死刑と同義語に相当する。
そんな事、考える事だって嫌だ。だが、目の前に置かれている現実は余りにも非情に物語っていた。
「まさか・・・俺の他に此処に誰か居るとかは―――」
最早こうなれば一刻の猶予もない。急ぎこの見慣れぬ空間から抜け出し、早々に屯所へと戻り、かつ今宵起こった事を自身の胸の内にひっそりと仕舞い込まねばならない。
そんな事守護騎士にあるまじき非道とか外道とか言われそうだが、今は己自身の身が大事。
幸い誰にも見られていないから問題はない。無いと思いたい。そう思いたい今日この頃だったりする。
とりあえず、今見える範囲に人の気配がないか視線を巡らせてみる。
目の前にある高価そうな家具の類近辺には誰も居ない。
同様に出口と思われる扉近辺にも人の気配は感じられない。
トイレと風呂場を思わせる奥の間辺りにもそれらしき気配はなさそうだった。
ほっと息を吐く。
どうやらこの部屋俺しかいないみたいだ。
安堵のため息を吐き、さっさと此処から出てしまおうとさっきまで頭を押さえていた右手を降ろすと、降ろしたその手が何かを掴んだ。
球体状で柔らかく、それでいて温かみを帯びた何かを―――
「・・・ぁん・・・」
「・・・ゑ??・・・」
その少し後で聞こえて来た何処となく艶のある色っぽい声。
思わず男だったらもう一度聞きたいなぁと思えてしまう程の声だった。
その声から当然分かるではあろうが、その声の主は当然女性の物だと言うのが察せられた。
(女の声・・・まさか、主? それともヴィータか? いや、まさかシグナムかシャマルか? だが、主はたまに潜り込んで来る事はあっただろうが、何故この時にあいつらが・・・)
途端に頭の中がパニック状態になる。まさか、この状況で一番会いたくない者が間近に居た事に気づかなかったなんて。
どうする、急いでこの場から立ち去るか?
嫌、こうも距離がない状況では下手に動いて相手を起こせばそれでジ・エンド。
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