第三章
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「そのことも」
「そうか、孫も元気でな」
「そのこともなのね」
「いいことだよ」
こう妹に言うのだった。
「本当に幸せだよ」
「そうよね」
「孫に会ったよな」
「ええ、お子さん達にも」
兄のとだ、光はまた答えた。
「皆元気そうでね」
「御前もな、ずっと会っていないからどうかって思っていたが」
「心配してくれていたの」
「妹だぞ」
兄の返事は即答だった。
「だったらな」
「心配することもなの」
「当然だろ、それであっちじゃ苦労もしていないか」
「ええ、今はね」
昔から変な男が周りにいた、だが今は人付き合いを避けていることもあってというのだ。
「何もないわ」
「それは何よりだ、じゃあな」
「じゃあ?」
「飲むか」
「ええ」
光は兄の言葉に頷いてだ、そしてだった。
兄が出してくれたビールを自分のカップで受けた、そうしてそのビールを飲み歌ったり芸は出さなかったが。
それでもだ、宴が終わるまでそこにいてだった。
次の日の法事にも出た、そしてだった。
法事が終わってからだ、母に声をかけられたのだった。
「ねえ、来年は」
「来年は?」
「戻ってきてくれる?」
こう言うのだった。
「そうしてくれる?」
「考えさせて」
光は母にこう返した。
「若しかしたらね」
「来年も」
「来させて」
「ええ、待ってるわね」
「ひょっとしたら」
来るかも知れないとだ、光は答えた。そしてだった。
今住んでいる部屋に帰った、部屋に帰っても母と兄の言葉が心に残っていた。それが暫く続いていてだった。
今度は自分から言って正月に実家に戻った、それはゴールデンウィークにも法事が行われるお盆にもとなって。
何時しか光は実家によく顔を出す様になった、それからいい人を紹介してもらい結婚することになった。そして子供が出来た時にも。
母は喜んでくれた、そして兄も。もう二人は光にとって疎遠な存在ではなくなっていた。暖かく優しい家族だった。今まで気付いていなかったが最初からそうだったことに気付いたこともあってその家族の存在が余計に嬉しかった。
母と兄 完
2018・6・18
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