巻ノ百四十一 槍が折れその五
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「大坂は完全に滅ぶ」
「ですな、ですから」
「ここはです」
「我儘を言われず」
「右大臣様を出陣させて欲しいです」
「全くじゃ、しかし我等は今はこのままじゃ」
秀頼のことが気になるがというのだ。
「攻めていくぞ」
「わかり申した」
「大御所殿を目指し」
「そうしていきましょう」
十勇士達は幸村の言葉に頷き攻め続けた、幸村もそれは同じで彼等と自身の分身達と共にだった。兵を率い自らも戦った。
その勢いは凄まじく遂に家康の軍勢は崩れた、幕臣達はそれを見て家康に言った。
「大御所様、最早です」
「この陣にまで来るのは間違いありませぬ」
「ですからここは」
「何とか」
「こうなったか」
家康は苦い顔になり立ち上がって言った。
「馬を用意しておいてよかったのう」
「ここはお逃げ下さい」
「後ろは我等が引き受けます」
「ですからここは」
「後ろに」
「わかった、ではな」
「拙者がお供します」
大久保は大槍を手に家康に言った。
「そして敵がどれだけ来ようとも」
「守ってくれるか」
「必ず、こうした時はです」
まさにというのだ。
「拙者の様な武辺の出番」
「三河武士のか」
「近頃三河武士もたるんでおりまする」
その生粋の三河武士の言葉だ、多くの戦の場を駆け回ってきた。
「この程度の戦これまで幾つあったか」
「そうであるからか」
「はい、ここは拙者そしてです」
「生粋の三河武士達にか」
「お任せ下され、そして」
「何があとうともか」
「生き延びて下され」
三河武士の忠義を以てだ、大久保は家康に言った。
「必ず」
「済まぬな」
「ははは、大御所様はこうした時いつもそう言われますな」
「そうであるかのう」
「はい、我等が命懸けの時は」
そのうえで家康を助ける時はというのだ。
「我等にそう言われますな」
「当然じゃ、お主達の忠義にこれまでどれだけ助けられたか」
そう思うと、というのだ。家康にしても。
「そう思わずにはいられぬ」
「だからですな」
「うむ、わしはじゃ」
「そう言われますか」
「必ずな、そしてな」
「生き延びらまするな」
「お主達に応えてな」
こう言ってだ、家康は馬を走らせて陣を後にした。彼を護る者達以外に踏み止まる相手も残った、それは大久保達だった。
彼等は決死に戦いそうしてだった、家康を逃がさんとする。彼等には彼等の想い、武勇と忠義に対するそれがあった。
だが幸村達にとってそれは難儀なものだった、それ故に。
足を止められてだった、幸村が思わず歯噛みした。
「くっ、真の三河武士達が出て来たな」
「はい、ここで」
「遂に本陣に迫ったというのに」
「馬印まであと一歩」
「そこまで至ったというのに」
十勇士達も苦
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