第十二話 試み
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仕方のないことである。
「あー、先ほどまでの演習、遠くからだが見させてもらいました。着任したばかりでほとんど目の肥えていない私が言うのもなんですが、素人の私から見ても素晴らしい練度だと思います」
凰香が一言一言発するごとに、艦娘達の顔に不満の色が募っていくのがよくわかる。しかしその程度で凰香がビビったりすることはない。それが面白くないのか、天龍はつまらなさそうな表情をしている。
そんな天龍を無視して凰香は続けた。
「しかし、練度が高いからと言って日々の訓練や出撃で気の抜くのは絶対にダメです。それが慢心を生み、自分たちを傷付ける、最悪の場合轟沈しちまうかもしれません。それだけは絶対に避けなければならないこと。これは、常に肝に銘じておいてください」
言葉の一つ一つを言うたびに艦娘達の顔に皺が刻み込まれていく。そんなことお前に言われなくても分かってるわ、とでも言いたげである。
しかし、これは建前。本題はここからだ。
「……なんて、私が言ったところであんまり意味がないのは分かっています。そんなことはあなた達が一番分かっていることです。でも今日の演習を見る限り、誰一人としてそんなことを念頭に置いてやっている方は一人も見受けられませんでした。だから、私が改めて言っているわけです。お分かりですか?」
突然の話の内容の変わり具合に殆どの艦娘が驚いている。しかし、それは次第に先ほどよりも敵意がにじみ出ているものに変わっていく。まあ注目を集められるので別に構わないのだが。
「とはいえ、常にそんなことを考えるなんて難しいですよね。偉そうに言っている私だってずっと続けられる自信はありません。そんなことを続けていたら疲れてしまいますしね。見返りでもあれば別ですけど」
言葉と共に肩をすくめる。それに、何人かの艦娘が同感するように頷き始めた。
「そこで、ここで一つ提案です」
凰香はそこで言葉を切って、目の前にいる艦娘一人一人の表情を見る。全員、凰香次に続ける言葉に興味津々のようだ。さっきまで敵意がにじみ出ていた視線も少なくなっている。
凰香は少し間を空けてから言った。
「今日の演習から、各艦種で一番の成績を残した奴に間宮アイス券を進呈しましょう」
そう言い放った瞬間、艦娘達の顔から表情が消えた。おそらく、凰香が発した言葉の意味を理解したのだろう。
そして、言葉の意味を理解した各所から驚きの声が上がり始める。
そのことを気にせずに凰香は続けた。
「もちろん、これは演習に限らずこの鎮守府で行われる戦果に応じて進呈するつもりです。しかし、何分思いつきですから今すぐ全てのことに反映させるのは難しい。取り敢えず、まずは演
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