第十二話 試み
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だろう。
そんなことを考えていると、次は駆逐艦よりも少し背の高い艦娘がスタートラインに立った。見た目からしておそらく軽巡洋艦だろう。
黒髪の短いツインテールに髪飾りを付け、忍者のような意匠のオレンジ色の服を身につけている。両腕の長手袋には主砲と副砲が付いており、、日差しを浴びて黒く光っていた。そんな海の上に佇む姿は、先ほどまでの駆逐艦と比べると幾分か様になっている。
しかし、彼女も駆逐艦達と同じように無表情のまま前方を向き、スタートの合図を待っているのが残念なところである。
やがてスタートの合図が放たれ、彼女は勢いよくスタートを切る。
最初の難関である縦に並んだ浮きの間をジグザグに進むのを難なく突破し、最後の浮き近くにある的を通り過ぎ様に副砲で当てた。そのままスピードを上げ、次の急カーブに差し掛かる。彼女は身体の重心移動を利用してほぼスピードを落とさずにカーブを突破、的も副砲で難なく当てる。しかし、彼女は無表情のまま更にスピードを上げ、コースを疾走していく。
今まで見てきた駆逐艦とは一線を引く、極限に無駄を省いたその速さと的を射抜く正確さ。これが旗艦を担う軽巡洋艦か。演習といえども、やっぱりその練度の高さを垣間見えることが出来る。
しかし、逆に極限に無駄を省いた旋回技術とどんな体勢からも正確に射貫く射撃技術からは人間味が一切感じられない。やはり、『兵器』として生きてきた賜物と言えるだろう。
これならまだ深海棲艦の方が人間味を帯びていると言える。
そんな恐ろしいほど正確にコースを走り抜けた彼女は、ゴールした後も何事もなかったかのように陸へと向かう。それとすれ違うように、次の軽巡洋艦がスタートラインに向かっていた。
「次は天龍みたいだね」
時雨が言った通り、天龍が先ほどの少女とすれ違ってスタートラインに向かっていた。砲門を引っ提げていく彼女の腕には、専用の艤装なのか、独特の形をした刀の艤装が握られていた。おそらくあの刀で的を斬ってもポイントが加算されるのだろう。
「凰香、ちょっといいかい?」
不意に時雨が小声で話しかけてくる。
凰香は小声で時雨に聞いた。
「時雨、どうかした?」
「今思ったんだけど、『アレ』が使えるんじゃないかな?」
「ああ、なるほど」
時雨の言葉を聞いた防空棲姫が納得の声をあげる。
凰香もまた納得した。時雨の言う通り、『アレ』は効果があるだろう。
「どうしました?」
不意に声をかけられ、横を見ると訝しげな顔の大淀が覗き込んでいた。おそらく凰香と時雨がコソコソと話をしているのを見て怪しんだのだろう。
凰香は大淀に言った。
「大淀さん、今から演習場まで連れて行ってくれませんか?」
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