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艦隊これくしょん 災厄に魅入られし少女
第十二話 試み
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く頭を下げた。
 
「はい、大淀型軽巡洋艦一番艦、大淀です」 
「私は先日着任したばかりの海原黒香です。こっちは私の連れの時雨」
「よろしく、大淀さん」
 
頭を上げながら自己紹介をした大淀に、凰香と時雨も軽く頭を下げて自己紹介をする。榛名と夕立は凰香が『頼みごと』をしたので、今はこの場にいない。また、防空棲姫は幽体化しているため、大淀にはその姿は見えていない。
頭を上げた際、大淀と目が合ったが、彼女がすぐさま逸らして手に持つ資料に目を落とした。わかりきっていたことだが、やはり簡単には距離を縮められないらしい。
 
まあそんなわけで凰香達は今、演習が行われる工廠近くの海岸にある見張り台にいる。初霜と別れた直後にフラっと横に彼女が現れてここに案内され、演習の内容を彼女の説明と手元の資料で教わったわけである。演習を教わってから居座っているこの見張り台は、眼下に広がる広大な海を一望でき、艦娘達が行う演習を隅々まで見渡すことが出来る場所だ。見張り台だから当たり前なのだが。
 
ちなみに初霜とは海に着いたときに艤装の最終点検をしてくるとのこのことで別れた際、朝の約束を念押しされたのはどうでもいいことである。これから事あるごとに飯を要求してくると考えると、割と面倒くさい。とはいえ、それでモチベーションを上がってくれるなら安いものである。
 
そんなことを考えながら、眼下で行われている駆逐艦達のスコアアタックを見つめる。
今まで挑戦した駆逐艦の殆どは複雑に入り組むコースを難なく突破、道中にある的にもほぼ全て当たっている。勿論複雑なコースに悪戦苦闘したり射撃が得意でない子もいるが、そういう子に限って最速のタイムを叩きだしたり全ての的を当てるなど、得意不得意に関わらずなかなかの練度を誇っている。
しかし、ゴールした駆逐艦たちの顔には嬉しそうな顔は一切浮かんでいない。

(『こんなものは朝飯前』ってか)

凰香はそう思うと、大淀に聞いた。
 
「大淀さん、この演習で優秀な成績だった子に何かあげるとかしているのですか?」
「私達は戦うために生まれた『兵器』です。そんなものなんていりませんよ」
 
凰香の問いに、大淀は凰香を見ることすら億劫なのか、資料から一切目を離さずにそう言ってくる。そんなさらっと『兵器』とか言う辺り、もはや洗脳レベルで浸透してしまっているようだ。

しかしあれだけの練度から彼女達が積み上げてきた努力は並大抵の事ではないことは明白だ。それをさも当たり前の様に扱うのは、少々気が引けると言うもの。また、その驕り高ぶったものがいつ慢心に変わるかもしれない。それだけは避けなければならない。
常に高いパフォーマンスとモチベーションを維持するためにも、何かしら考えた方がいい
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