暁 〜小説投稿サイト〜
「あなたの父は、そして母は元気ですか。」
無題
[4/4]

[9] 最初 [1]後書き
家庭の大変さは
解ったから。










男の子達の声が聞こえた。
どうやら
サッカー部の子達だろう
今日の試合は勝った様だ。




とんと音沙汰の無い
東京の孫は元気だろうか。

正月も夏休みも来なくなったな。



娘からの年賀状、
写真によれば
サッカーをしている様だが。







もう、こんな時間か。

…大分、日が長くなった。






「…よっこらしょ。」

夕飯の支度でもするか。












母親は
白い箱になって帰って来た。





大日本帝国が負ける少し前だ。






私には戦争の知識が無い。



母親がどうやって死んだのかも
解らない。



ただ遺骨も無い箱と、
遺品として
母親の手帳が有って、、、
看護日誌の様な物が
少し書かれていた。



父親への恋文みたいな
文面が殆どで
私達兄妹を心配する内容も
書かれてはいたんだが。









私はその存在を知らなかった。






父親が亡くなった時に
遺品整理をしていて
父親の机の引出しの奥から
出て来たのである。








手帳には
古い写真が挟まっており


茶色く色褪せた写真は
妹が生まれて間もない頃の
家族写真だった。










裏には





悠、美依子、ごめんなさい。

早く会いたい。






と書かれていた。











私はそれを見て







初めて母親を許せた気がする。










蚊の羽音を耳にして
自分の顔を叩く。


「そろそろ蚊取り線香、
出さなきゃな、母さん。」


それは母親に言ったのか
亡妻に言ったのか。





一人で、ふっと笑う。















ある家族の
個人的な戦史である。





















.
[9] 最初 [1]後書き


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ