暁 〜小説投稿サイト〜
「あなたの父は、そして母は元気ですか。」
無題
[1/4]

前書き [1] 最後



「こんにちは、
今日は宜しくお願いします。」




6年生達の声で私は我に帰った。


…写真を見ながら
思い出に浸っていたらしい。




「おや?男の子が居ないね?」

「すいません、
ちょうど、この班の男子が
サッカー部でして。
今日から市内の大会で…。」



お腹の大きい、若い女性教諭が
申し訳無さそうに言い訳をした。


「そうですか、
それは目出度い事。」


私はそう言ってあげた。






地域の戦史を辿る
課外授業らしい。


学校側から子供達にお話しをと
依頼を受けた時、
私は一度は断った。

私自身は戦争に
行っていないから。



話したくない気持ちも有った。








きっとこの町が
当時は軍需工場が多くて
海からアメリカの戦艦から
艦砲射撃を受けた事、
それは私以外の人がみな、
話す事だろう。





でも戦場を知らない私が
自分の家族の事を話して
伝えるのも
何かの役に立つのかも知れない。




私は母親の事を
話す決心をしていた。








「さて、…どこから話そうか。」






お茶を急須から
湯呑みに入れながら
私は当時を思い出す。

緊張なのか、
言葉が上手く出て来ない。



あれは私が何歳の時だろう。


「小學校には
まだ行っていなかったんです。」







父親は体の弱い人で
それこそ小學校の先生を
していたんだが、
兵隊さんにはならなかった。



母親は看護婦だった。






あれは、、、
梅雨入り前の暑い日の事だと。


駅のホームに私達は居た。

そこまで
どうやって来たかは
覚えていない。







「万歳ー万歳ー万歳ー!!」



町の人がみな、
私達に万歳をしている。




「父さん、どうしてみんなは
万歳してるの?」

「母さんが満州に行くんだ。
従軍看護婦として
天皇陛下の兵隊さん達を
看病しに行くんだよ、
喜ばしく名誉な事なんだ。
昨日、話しただろ?」




そう言う父親は
ちっとも嬉しそうではなく
笑っていなかった。



「みいは?
美依子は連れていくの?」




まだ赤ん坊の妹、
おっぱいはどうするのだろう。


「鍛冶町の伯母さんに
お願いしたから大丈夫さ。」




父親はそう言う。


父親と母親は
二言三言、言葉を交わし


母親は
前書き [1] 最後


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ