166部分:第十二話 夏に入りその十七
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
第十二話 夏に入りその十七
「こんなことで嘘は言わないから」
「冗談で済まさないか?普通」
「私の場合は違う」
その言葉にもそれが出ていた。本気にしか見えない。そんな言葉だった。
「そうした相手は消す」
「粛清かよ」
「抹殺とも言う」
ここでは冗談も入れてはいた。
「それをするから」
「で、その椎名から見て俺はどうなんだ?」
「斉宮は?」
「ああ、どうなんだ?」
「いい加減なところはあるけれどそれ程じゃない」
これが椎名から見た陽太郎だった。
「別に。そこまではいかないから」
「けれどいい加減なんだな」
「というか妙に頼りないところもある」
「ア著リ内なあ」
「隙がある」
具体的にはそういうことだった。
「抜けたところがある」
「抜けてるか」
「それが問題」
こう言うのである。
「そこは気をつける」
「ああ、わかった」
「ただ。つきぴーはそれ以上にやばいところがある」
「隙があるってか」
「お嬢様だから」
実はここで陽太郎にかなりのことを教えていた。しかし彼はそれに気付かなかった。椎名が言っているのはこういうところだった。
「だから」
「それでなのか」
「そう、そこがあぶない」
こう話すのである。
「だから私はその分」
「警戒するんだな」
「レーダーになりソナーにもなる」
軍事用語も出してきた。それが妙に似合う。
「そうなるから」
「西堀の為にか」
「友達の為に」
片言だがそれでもだ。そこには確かな心があった。
「そうなる」
「御前って時々いい奴だよな」
陽太郎は椎名のその言葉を受けて述べた。
「時々だけれどな」
「普段は?」
「さっきのやり取りのままだよ」
これが返答だった。
「とんでもねえ奴だ」
「そう言うの」
「何度でも言うさ。ったくよお」
「気にしない気にしない」
「気にするよ」
少しむっとした言葉になって返す陽太郎だった。
「っていうかここで気にしなくてどうするんだよ」
「それでも気にしない」
まだ言う椎名だった。やはり強い。
そしてだ。彼女のペースで切り返しをかけてきたのだった。
「それでだけれど」
「何だよ、それで」
「つきぴーのお家のこと」
今度言うのはこのことだった。本当に見事な切り返しだった。
「いいかしら」
「何だよ、それで」
「驚かない、慌てない、平常心を保つ」
言うのはこの三つだった。それを言うのである。
「それはしっかりとしておく」
「慌てないのだけはわかるような気がするけれどな」
「後の二つは?」
「よくわからないな。特に驚かないって何だ?」
とりわけ問うのはこのことだった。
「何だよ、それって」
「言ったまま」
ここでも素っ気無く返す椎
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ