第四章
[8]前話
「違うのか」
「やり過ぎよ。それに皆泣いてるから」
「泣いているから何だ」
「もうこれ以上したら」
「駄目か」
「もういいよ」
「そうなのか、ではだ」
蛭子は少女の言葉を受け入れてこれ以上の攻撃を止めた。これ以降少女はクラスメイト達にもいじめられることはなくなった。
蛭子は少女として人間世界の中で生きることになり少女は彼女の心の中で彼女と共に生きていた。だが。
ある日蛭子は少女の部屋今は自分の部屋になっているその部屋の中で少女に尋ねた。
「御前は何故親を助けいじめっ子達へのさらなる攻撃を止めた」
「だって可哀想だから」
「可哀想。御前をいじめていたのにか」
「それはそうだけれど」
少女は心の中で話した。
「それでもよ」
「やり過ぎか」
「そう、お父さんもお母さんもあそこまでしたら」
もう暴力を振るうことはなくなった彼等もというのだ。
「可哀想だし」
「いじめっ子達もか」
「そうよ、あれ以上してたら」
「そういうものか」
「貴女はそう思わないの?」
「思わない」
蛭子は少女にすぐに答えた。
「自分を攻撃する奴にはだ」
「ああしてもいいの」
「何が悪い」
こう答えるのだった。
「違うか」
「酷いことしたら駄目だよ」
「そんなものか」
「うん、どんな人でも」
「それは確か優しさと言ったな」
蛭子は少女が今語っている感情が何かは知っていた、それで少女に対して言葉を返した。
「知っていたが感じたことはなかった」
「そうなの」
「そうだ、不思議だな」
その感じ取ったものはというのだ。
「暖かい、こんなものを感じたのははじめてだ」
「そうだったの?」
「そうだ、御前のその優しさをもっと知っていいか」
「私が優しい人だっていうのなら」
「そうさせてもらう、これからもな」
少女の心の中に共にいてだ、蛭子は少女に言った。
そうしてこれからも少女と共に人間の世界で生きていこうと決意した、少女が自分に感じさせた優しさをもっと知りたく感じたいと思ってだ。そう決意したのだった。
少女となって 完
2018・6・17
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