第三部 ZODIAC CRUSADERS
CHAPTER#54
FAREWELL CAUSATION]W〜Ragnar?k Bastard〜
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【1】
全員、何の言葉も無かった、何も発するコトが出来なかった。
想定を遥かに超える『災厄』に遭遇した時、
人の思考は停止し身体は硬直する。
コレ以上の地獄はないだろうと想った、
ソレは単なる“思い込み”だった、
底知れない恐怖と絶望の裏返し、
ただ勝手に“そうだと信じたかっただけだ”
箱舟の中を、沈鬱が充たした。
浸水しているわけでもないのに呼吸もままならない空気。
確実に待つ破滅に向かって船体は流れる、
箱舟とは荒れ狂う海を乗り越えるのではなく
本来ただ災厄に翻弄されるだけのモノだから。
「この地は、諦めましょう……
命懸けと犬死には違う……
諦めるのも勇気よ、ノリアキ……」
言い含めるように肩へ手を置き、
同乗する両者の性格上、口が裂けても言わないであろう台詞を彼女が代弁した。
途端に、今まで抑えつけられていた負傷と疲労が重く全身に圧し掛かる。
今の今まで忘れていたが、皆が皆、強敵相手との戦闘を終えた者ばかり、
勝利したとはいえ無傷の者などいない、
場合によっては生きてこの場にいなかったかもしれない。
「それでいいわね? 二人とも。
本当に救えるなら、一匹も救う。
でも今回は“九十九匹の方”を取らざる負えないわ。
悔しいだろうけどね……」
苛烈凄惨な印象が強いが、フレイムヘイズ以前、
一人の少女と共にいたマージョリー・ドーという人間は、
こういう女性。
憂いに充ちた視線を隙間窓へ向けると同時に、
熟練のフレイムヘイズ、使命完遂の思考はソレとは別に動いていた。
(兎に角、嘗ての“大戦” ソレを遥かに凌ぐ『大災厄』
アシズなんかと比べモノにならない……!
私とヴィルとアラストール、何人集まるか解らないけど、
手当たり次第に呼び掛けて、前大戦以上の『兵団』を創り上げるしかない……ッ!)
決意とは裏腹に胸中を苛む苦渋の決断。
(でも……! その間に何万人……何千万人死ぬか解らない……!
討滅ばかりで人間の安全なんて無視しまくってた、
私 達の、コレがその代償……!)
本心からではなく“結果救えていただけ” では、
人の生命など恐ろしく軽い存在となる。
故に想定外の事態に陥れば、その意識も練度も皆無なため
大量殺戮が起きるのは必然。
“自己満足が全て” と悦に浸るのは勝手だが、
その“ついで” で掬えるほど、人の生命は軽くはない。
マージョリーはこの大いなる矛盾に、とうの昔に気が付いていた。
人一人の生命を蔑ろにしておいて、
どうして“世界のバランス”などという巨大なモノが救えるのか、と。
“たった一つの大切な生命”
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