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レーヴァティン
第五十八話 神仏の存在その一

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               第五十八話  神仏の存在
 英雄は酒を飲みつつ仲間達に自分の過去を話した、その過去はどういったものかというと。
「中学二年まで俺は神も仏も信じていなかった」
「その時まではですか」
「そうだ、全くだ」 
 こちらの世界では僧侶である謙二に述べた。
「嘘だと思っていた、坊さんだの神主もだ」
「詐欺師とですか」
「それか馬鹿だと思っていた」
 かつての自分はというのだ。
「本当にな、しかしな」
「中学二年の時にですか」
「普通に学校から帰っていた時だ、急にだ」
「急に、でしたか」
「青信号の横断歩道を渡ろうとしていた」
 日常でよくあることだ、横断歩道なぞ何処にでもあるしそこには信号があることも非常に多い。全ては交通安全の為だ。
「しかし渡ろうとしたな」
「その時に」
「声が聞こえた、止まれとな」
 声が強くなった、自然に。
「その声に思わず足を止めるとだ」
「そこに車が来たんやな」
 耕平はそのことを察して言った。
「そやな」
「そうだった、若し止まらないとだ」
「その車信号無視しとったんやな」
「しかも相当なスピード、百キロはだ」
「超えてたんやな」
「若し俺があの時立ち止まらないと」
 その時はというのだ。
「俺は死んでいただろう」
「それでその声がやな」
「おそらくだが」
「神様か仏様やな」
「その声だったと思う」
「絶対そやな」
 耕平は鮎を食べつつ英雄に応えた。
「それはな」
「神か仏がだな」
「言うたんや」
 そうだったとだ、耕平は確かな声で英雄に話した。
「自分の心の中にな」
「やはりそうだな」
「そうでないとや」
「説明がつかないな」
「そう思うわ、結局人間ってのはな」
 耕平はこうも話した。
「ちっぽけや、ほんまにプランクトンみたいなもんや」
「この世界ではな」
「そんなもんや、偉大かっていうとな」
「決してだな」
「どんな人間も小さい」
 軽い口調だった、しかしそこにあるものは重かった。
「所詮な」
「そうだな、そこから俺はあの声は神か仏の声だと考え」
「そこからやな」
「信じる様になった」 
 神仏の存在、それをというのだ。
「急に声が聞こえたからな」
「そういうことほんまにあるさかいな」
「御前もそう思うな」
「ああ、偶然で助かったことが何度あるか」
 耕平にしてもというのだ。
「それがしにしても」
「そうしたことは誰でもあるかと」
 智も言ってきた。
「偶然、しかし」
「その偶然でな」
「助かることが」
「その偶然はどうして起こったか」
「そう考えるとでござる」
「それは誰かの配剤だな」
「そしてその配剤は」
 何かというと。
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