【紫陽花にいざなわれて】
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たけど……本当に優しいのはネジ兄さんの方だから。あの事件が起こる前までは、優しく接してくれていたのを今でもよく覚えてる……。修業の時は励ましてくれて、一緒にお昼寝したり一緒に遊んでくれたり、転んだ時は背負ってくれたりして──。それは、単にわたしが宗家だったからかもしれないけど、わたしにとってネジ兄さんは一つ年上のいとこの、強くて優しいお兄さんだから……」
「───??」
ネジは無表情のまま、目を伏せ黙っている。
「じゃあ……、ネジ兄さんに抱きついてごらん」
「──え?」
「は……? 何を、言い出すんですヒナタ様」
ヒナタの唐突な発言に、歳下の方のヒナタと従兄は面食らう。
「私は何もおかしな事言ってるつもりはないよ、ネジ兄さん。……ね、そうしてもらってごらん、“私”」
ヒナタは従兄と歳下の自分自身に微笑を向ける。
「え、えっと、あの……っ」
「??───」
従兄が黙ったまま眼を閉ざし畳の上に正座した為、歳下のヒナタはどぎまぎしてしまったが、歳上のヒナタが促すように頷くのを見て、おずおずと従兄に近寄り思い切って胸回りに抱きつき顔をうずめる。
「──どう? あったかいでしょう」
「──?うん、とっても……あったかい」
ネジに抱きついたヒナタは離すまいとするようにぎゅっと両腕に力を込め、そうされた方のネジは若干戸惑いつつも、優しく抱き返す。
(ネジ兄さんの、鼓動が伝わってくる……。トク、トク……優しい、音?──
そうだ……、ネジ兄さんと話したいことがいっぱいあるの……。今までずっと、言えてなかったこと……。だから、わたしはわたしに、戻らなきゃ───)
「??──ぁ」
「私……、元の居場所に帰ったみたいだね」
ネジがふと気がつくと、腕の中に居たはずの過去のヒナタの姿は無かった。
外からは、静かな雨音だけが聞こえ続けている。
「紫陽花、今年も庭に綺麗に咲いたね。……梅雨が明けたら、今度は向日葵が咲き出すね」
「そう、ですね。……あの、ヒナタ様」
「──ネジ兄さん、二人きりの時は、敬語も様付けもやめにするって約束でしょう?」
「あぁ……そう、だった。──ヒナタは、以前にもこんな経験があったのか?」
「ふふ、どうだったかな……。そうかもしれないね」
いたずらっぽく笑むヒナタに、ネジはつられて微笑する。
「フ…、そうか」
「ネジ兄さん……」
ヒナタはおもむろに、甘えるようにネジの胸回りに抱きついて顔をうずめる。
「やっぱり……こうしてると、ネジ兄さんの鼓動が聴こえて、一番落ち着くよ」
「……そう、か」
座ったままの姿勢で、ヒナタの頭をネジ
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