02.生前手記
生前手記‐水城涙‐
[2/13]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
うな、大男だった。
何考えてんだ彼奴は!と思った。
だけど、実際戦ってみると、
意外と俺は勝つことが出来た。
彼奴曰く、
「君は強いけど、いつも相手が悪い」
だそうだ。
褒められたことは嬉しい。
だけど、その言葉は遠まわしに、
「私は強い」と言っているようなものだろう?
嗚呼、ムカつく。
絶対勝ってやる。
4月21日
三十回目の訓練にして、
ようやく彼奴に攻撃を当てることが出来た。
が、その後攻撃を当てることに必死になり過ぎて、
周りを見ていなかったため、
派手に鉄骨が下がっている柱にぶつかってしまい、
鉄骨が落ちてきた。
そして、俺を守る為に彼奴が鉄骨の下敷きになって、
怪我を負わせてしまった。
今、医務室で治療をしているらしいが、
意識がまだ戻っていないらしい。
俺はとんでもないことをしてしまった。
このまま彼奴の意識が戻らなかったらどうしよう。
彼奴に後遺症でも残ってしまったらどうしよう。
ごめんなさい
許してくれるわけないことは分かってる。
それでも、
ごめんなさい
4月22日
彼奴は無事に目を覚ました。
そして、もう仕事を再開していた。
だけど、俺は彼奴の顔が見れなくて、
ずっと彼奴から逃げていた
廊下で会った時も、
執務室に行った時も、
目を合わせないように、俯いていた。
彼奴は悪くないのに、
彼奴は悲しそうな顔をしていて、
俺は俺の事が嫌いになった。
もうこんな自分は嫌だ。
もっと、自分に向き合って、
どうすればいいのか考えるべきだ。
だけど、それができない。
7月30日
もうあの日から一度も彼奴と戦っていない。
いつも他の奴を俺の相手にしている。
不満などは無い
彼奴が俺の為にしてくれているのだ。
むしろ感謝だ。
今彼奴と戦ったって、俺はしっかり戦えない。
またやってしまうのではないかと思って、
きっとまともに戦う事は出来ない
まだまともに顔を合わせる事すらできないのだ
もう罪悪感が積もるばかりで、
仕事にも身が入らず、
余計に彼奴を心配させるばかりだった。
もう嫌だ。
こんなに辛いのは嫌だ。
どうすればいいんだよ
9月24日
いつもは仄暗い地下で訓練をしていたが、
今日は庭園のような場所に呼び出された
そして、彼奴と戦った。
結果はまたボロ負けだった。
そして落ち込んでいたところを、
彼奴は
「強くなったね」
と励ましてきた。
「勝てないのでは強さなんて意味が無い」
俺はそう言った。
また顔が会わせられない
ロクに話もできない
もうダメダメじゃないか。
でも、彼奴は
「勝てなくたっていい」
と言って、
俺に一つ紙袋を渡してきた。
「ずっと避けてるみたいな感じでごめんね」
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ