02.生前手記
生前手記‐七星宙‐
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悲痛な叫びが部屋を埋め尽くす。
「事実、かい……へん……お願い……お願いだから、七星宙を……殺さないで」
弱々しく萎んでいく声はやがて、やがて。
宙は最後まで俺を思い出さずに、消えた
俺に向けて、だれ、と
「なァ……起きろよ……」
それから全く動かなくなった
まだほのかに、宙の温もりと匂いが残っていた
「頼む………起きろ、……起きてくれよ……」
俺の事なんか、思い出さなくていい
全てを忘れても
また俺が全てを教えてやるから
だから宙はそこで寝ておけばいい
俺がどんだけ大切にしてきたと思っているんだ
ずっと、俺の隣で生きていて欲しかった
宙の記憶の中から俺が消えても、俺はこの先宙の事だけは忘れない
愛しい、俺の花嫁だから
「ぅう……ぅぁぁあああああああああ??」
琴葉の叫び声が拠点内に響き渡る。
命が燃え尽きる直前まで、必死に何かを書いていたノートを初めて手に取る
そこには、今まで俺が知らなかった宙との思い出が沢山詰まっていて
宙が確かに生きていた証だった
本当は、言われなくたって気づいてたのに
もうすぐ、いなくなってしまうこともわかってた
なんで俺は、見て見ぬふりをしていた
なんで傍にいてやらなかった
こんなに宙は必死に生きようとしていたのに
そうして、宙がずっと書き続けていた日記の一番最後のページに
ありがとう
わたしはしあわせだった
水城涙
いつだってそうだったね。
私の部下になったその日から、君は一生懸命だった。
今だって一生懸命生きようとしていた。
だけど、無くなっていく記憶は心も削っていく。
君を殺したのは私だ。
私がもう少し早くあの場所に行ければ、事実を変えることが出来たかもしれない。
だけど、良く考えれば、それは無理だったよね。
君は何時だって彼を大事にしていた。
あの七夕の日、君に書いてもらった短冊にも彼の事が書いてあったね。
よかったよ。君の願いが叶って。
「水城さんと共に居る」素敵な願いじゃあないか。
あの時の事はまだ覚えている。
星の綺麗な夜だったね。
ねぇ、今、君はどこにいるんだい?
私はここにいるよ。ずっとここにいる。
今日は月が綺麗だね。星も綺麗だ。
君はどの星だい?
嗚呼、今煌めいた星かい?
ふふ、こういう想像も楽しいものだ。
大切な彼にはもう会えたかい?
大切な弟にも。
悪かったね。二人を守ることが出来なくて。
こんなにも早く、二人をそっちに向かわせてしまって。
すまない。
嗚呼、私はその罪をどうやって償えば良い?
君と、彼と、弟を殺した罪を、どうやって償えば良い?
教えてくれ。
この罪を償える罰をくれ。
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