159部分:第十二話 夏に入りその十
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第十二話 夏に入りその十
「はい、どんどん」
「はい、頑張って」
「はい、もう一丁」
小さなお椀から二人が持っているお椀にそばがどんどん運ばれてくる。二人はそれを次々と、飲むように食べていく。やがてそれがが。
十杯、二十杯となりだ。瞬く間に五十杯となった。
だが二人の勢いは止まらない。そうしてだった。
「はい、どんどん」
「はい、頑張って」
「はい、もう一杯」
食べると次から次だった。そうするとだ。
あっという間に七十杯を超え八十になりだ。九十も越えた。
「へえ、あの二人」
「女の子もな」
「かなり食べるよな」
「ああ、あのままだとな」
「いくよな」
周りの客達がそんな話をはじめたその時だった。
遂に二人共百杯を超えた。ここでだ。
「あの」
「終わりですか?」
「はい、私は」
月美はだ。ここで箸を置いたのであった。
「有り難うございました」
「はい、じゃあこちらのお兄さんは」
「まだいけます」
陽太郎はこう返す。そうしてだった。
百十杯を越えた。百二十もだ。しかしだ。
これで終わりだった。流石にだ。
「ふう」
「終わりですね」
「有り難うございました」
満足した顔での言葉だった。
「おかげで」
「はい、それにしても御二人共」
「はい?」
「何ですか?」
「凄いですね、高校生ですよね」
お店の人はにこりと笑ってだ。こう二人に言うのである。
「御二人共百杯なんて」
「美味しかったですから」
「おそば好きなんで」
「いや、お見事ですよ」
お店の人はだ。そんな二人を褒め称えていた。まさに店員冥利に尽きるといったようなだ。そんな顔と声で二人に話すのである。
「本当に」
「はあ」
「そうなのですか」
「それじゃあこれに」
そしてだ。木の手形が出されてきた。
「御名前と食べた杯数を書いて下さいね」
「ああ、ここに書くんですか」
「手形に」
「わんこそばはそうなんですよ」
このことを二人に説明するのだった。
「こうして書きますから」
「わかりました。じゃあ」
「杯数を今から」
二人で数える。そうするとだった。
二人共かなりの数だった。やはりと言うべきものだった。
まず月美がだ。己の横に重ねられて置かれている杯の数を数えて言った。
「百五杯です」
「俺は」
そして陽太郎はだ。数えるとだ。
「百二十七杯です」
「すげえ」
「百二十七杯に百五杯か」
「壮絶だな」
客達も唖然となる。そうしてだ。
それからであった。賞賛の言葉も述べた。
「いや、見事」
「それだけ食うなんてな」
「将来有望じゃないのか?」
「二人共な」
陽太郎だけでなくだ。月美もだというのである。
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