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真田十勇士
巻ノ百四十 槍に生きその十四

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「このままな」
「七人のままで」
「七耀の術を使われたまま」
「そのままですな」
「向かわれますな」
「拙者が御首を挙げられれば」
 家康、その彼のだ。
「挙げる」
「殿ご自身が」
「そうされますか」
「是非」
「そうする、何としてもじゃ」
 大将である彼自ら今の様に槍を取ってというのだ。
「大御所殿の御首を挙げる」
「そして勝つ」
「そうしますな」
「ここは」
「そうじゃ、何としてもじゃ」
 家康の首を挙げて勝つ、それはもう執念であった。幸村は何時になく必死さを出し自ら二本の槍を振って突いて戦っていた。
 そして家康の本陣まで来た、するとだった。
 幸村は自ら先頭に立って槍を振るった、そうして足軽達も騎馬武者達も薙ぎ倒しつつ高らかに叫んだ。
「大御所殿は何処、真田源次郎見参!」
「来たか!」 
 家康はその姿を馬上で見て言った。
「遂に」
「大御所様、それではです」
 大久保が言ってきた。
「ここは」
「迎え撃つべきじゃな」
「天下人の軍勢は退きますか」
「その様なことは出来ぬ」
 家康も毅然として返した。
「到底な」
「左様ですな、では」
「皆の者、ここは前に向かうのじゃ」
 戦え、家康は自身が直接率いる兵達に告げた。
「敵の数は少ない、だからここは幾重にも守りの陣を敷いてじゃ」
「敵を止める」
「そうしますな」
「敵がどれだけ強くとも案ずることはない」
 家康の言葉は実に落ち着いたものだった、これまで数えきれないだけの戦を経てきたその経験からのことだけに。
 それでだ、己が今率いる兵達にも落ち着いて言うのだった。
「数を頼りに落ち着いて守りを固めればな」
「数の少ない敵はですな」
「その数も勢いも徐々に減り」
「そして遂にはですな」
「敗れますな」
「そうじゃ、鉄砲に弓矢に槍もある」
 敵を寄せ付けずに戦うものはというのだ、実際に家康の陣にはそうしたものもかなりの数がある。それで言うのだ。
「よいな、そうしたもので倒していけ」
「わかり申した」
「それでは鉄砲に弓矢」
「そして槍で」
「そうして防ぐのじゃ」
 こう言ってだ、そしてだった。
 家康は幸村の軍勢に鉄砲や弓矢、それに槍を向けた。彼は圧倒的な数とそうしたものを以て幸村を止めようとしていた。今ここに幸村そして家康はその全てを賭けた戦を行おうとしていた。


巻ノ百四十   完


                 2018・1・24
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