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真田十勇士
巻ノ百四十 槍に生きその十二

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「篭城となり講和になり」
「裸城になり」
「そしてですか」
「遂に滅ぶ」
 まさにというのだ。
「そうなってしまうであろう」
「左様ですか」
「全てはあの方の我儘からですか」
「大坂は戦になり傾き滅ぶ」
「そうなるのですな」
「そうじゃ、誰もあの方の我儘を止められぬからな」
 兼続はまだ大坂城の方を見ていた、もう本丸以外はなく寂しいものだ。茶々が堀を埋めても構わぬと言った結果だ、そうなったのも。
「滅ぶのじゃ」
「嘆かわしいことですな」
「天下人だった家がたったお一人の我儘を止められぬ結果滅ぶとは」
「残念なことですな」
「あの城も潰れるとなると」
「家の主は大事じゃ」
 兼続が実感していることだ、このことは。
「当家もそうであろう」
「はい、殿であればこそです」
「上杉家は今も残っておりまする」
「あの殿だからこそ」
「左様、わしも殿だからこそじゃ」
 上杉景勝、彼だからだというのだ。
「お仕えしそしてな」
「殿をお助けしてですな」
「政も戦も励まれているのですな」
「直江殿も」
「茶々殿ならとてもじゃ」
 彼が仕えてもというのだ。
「わしもどうにもならぬわ」
「お仕えしても」
「それでもですな」
「何も出来ず」
「滅んでいますか」
「逃げておったわ」
 支えるどころかというのだ。
「あの様な方と共に滅ぶことは出来るか」
「いえ、我儘ばかり申される方ですと」
「政も戦も何もおわかりになられず」
「そうした方と共に滅ぶなぞ」
「我等も」
「そうじゃ、とてもじゃ」
 それこそと言う兼続だった。
「わしには出来ぬ」
「だからですか」
「大坂方は多くの者が逃げたのですな」
「十万の兵が六万を切った」
「そこまで減ったのですな」
「そうもなった、そうなったからな」
 だからだというのだ。
「わしもな」
「そうはなりませぬな」
「殿にお仕えした様には」
「若し大坂におられたら」
「あの方は滅びる方じゃ」
 茶々、彼女はというのだ。
「ご自身だけなく家も周りの者もな」
「引き込み」
「そうして」
「滅びられる」
「そうした方ですか」
「一番厄介な方じゃ」
 滅びるにしてもというのだ。
「ご自身だけでなくしかも全く気付かれぬ」
「だからですか」
「豊臣家も滅んでしまう」
「ここでも我儘を言われて」
「そうして」
「そうじゃ、この戦如何に大坂方が攻めようとも」
 今の様にだ、彼等はとかく必死に攻め立てている。勢いは傍目から見れば彼等が兵力の劣勢を覆している様に見えた。
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