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真田十勇士
巻ノ百四十 槍に生きその十一

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 果敢に戦いつつだ、兵達に言っていた。
「よいか、怯むことなくな」
「戦いですな」
「そしてそのうえで」
「大坂方が勝ち」
「切支丹の教えを」
「そうじゃ、広めるのじゃ」
 天下にというのだ。
「幕府は禁じておる、しかしその幕府を倒せば」
「茶々様は切支丹を許しておられます」
「それならばですな」
「この戦に勝てば」
「切支丹の教えも」
「だからこそ勝つ」
 明石は強い決意と共に言った。
「よいな」
「わかり申した」
「それではです」
「このまま攻めていきましょう」
「真田殿と共に」
「毛利殿、長曾我部殿もそうされておる」
 彼等もというのだ。
「果敢にだ」
「攻めてそうして」
「我等もですな」
「大御所殿の御首を狙う」
「そうしますか」
「最早勝つにはそれしかない」
 だからだというのだ。
「よいな」
「はい、それでは」
「このまま進みましょう」
「そして勝ち」
「切支丹の信仰を護りましょうぞ」
「是非な」
 こう言ってだ、そのうえでだった。
 明石も幸村達の様に突き進む、それは長曾我部も毛利も同じでこれまでの戦を生き残った彼等も果敢にだった。
 攻めていた、だがそれでもだった。
 兼続は大坂城の方を見てだ、達観した様に言った。
「やはりな」
「右大臣様の馬印が見えませぬな」
「もう出陣されてもいい頃ですが」
「豊臣の黄金色の具足や旗は見えますが」
「あの方の馬印は出ませぬ」
「城から」
「先の戦で我等は大砲を盛大に撃った」
 兼続は周りの者達にこのことから話した。
「それで茶々殿が大層怯えられたな」
「その様ですな」
「それで一気に講和に動かれたとか」
「そしてそのことを覚えておられて」
「それで、ですか」
「あの方はいつものことじゃが」 
 こうも言う兼続だった。
「それで右大臣殿に傍を離れぬ様にとな」
「言われていますか」
「我儘を」
「そうなのですか」
「あの方はな」
 どうにもと言うのだった。
「そうした方じゃ、だからじゃ」
「右大臣様は動かれませぬか」
「もっと言えば動けぬ」
「そうした有様ですか」
「そうじゃ、ここで右大臣殿が出陣されれば」
 秀頼、他ならぬ彼がだ。
「大坂方の士気は極限まで上がってな」
「その士気で、ですな」
「攻めの勢いもあがり」
「そのうえで」
「その勢いで勝てる望みも出るが」
 しかしというのだ。
「それがなければな」
「大坂は勝てぬ」
「士気が極限まで上がらず」
「それで、ですな」
「大坂は敗れる」
「そうなりますか」
「そうなる、全ては茶々殿の我儘でそうなってな」
 戦になったというのだ、茶々が切支丹を家康への対抗意識から認めそうして戦が起こったというのだ。
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