第十二幕その六
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「そうなっていますし」
「余計にだね」
「いいことです」
「よし、じゃあ今日は余計にね」
「休肝日にされますね」
「そうするよ、休んで」
お酒を飲むことをというのです。
「今日はゆっくり休むよ」
「それじゃあお風呂に入って」
「寝ようね」
「そしてまた明日ですね」
「そうさせてもらうよ」
笑顔で言う先生でした、そして皆で一緒に神戸まで帰ってです。王子は先生達をそのお家まで届けてです。
それからです、こう言ったのでした。
「じゃあ僕達もね」
「お家にだね」
「戻るからね、また学校でね」
「うん、またね」
先生達は王子と笑顔で手を振り合ってお別れをしました、そうしてお風呂に入って歯を磨いてから寝ました。
その日の夜です、先生は寝ているとふと誰かから声をかけられました、目を覚ますとそこはあの高野山の中でした。
ご自身が高野山の中にいるのを確認してです、先生はまずは首を傾げさせました。
「あれっ、高野山に戻ったのかな」
「夢の中ですよ」
さっき先生に声をかけた穏やかで優しい感じの男の人の声がまた言ってきました。
「今は」
「あっ、そうなんだね」
「はい、それで先生」
声はまた先生に声をかけてきました。
「宜しいでしょうか」
「何かな」
「はい、お話をしたいのですが」
ここで先生の前に一人の仏教のお坊さんが現れました、僧衣も袈裟も古い時代のものですがとても奇麗なもので大柄でしっかりとした身体つきの男の人でした。
そのお坊さんを見てです、先生はすぐにわかりました。
「弘法大師ですか」
「はい、空海です」
何と空海さんでした、空海さんは先生ににこりと笑って答えてくれました。
「先生とお話がしたくて参りました」
「僕の夢の中に」
「夢もまた世界の一つですね」
「現身はこの世界の半分で」
「はい、夢の世界はですね」
「もう半分でしたね」
「江戸川乱歩さんのお言葉ですね」
空海さんは先生に笑顔で応えました。
「そうでしたね」
「二十世紀の日本の推理作家の」
「あの人ともお話をしたことがあります」
「そうだったんですか」
「はい、そしてなのですが」
「僕にどうして会いに来てくれたのか」
「そのことをお話しに参りました」
空海さんの口調はとても穏やかです、その穏やかな口調のまま先生にお話するのでした。お二人は高野山の中を共に歩きながらお話をしています。
「拙僧が生きていると言われていましたね」
「聞いていることなので」
「その通りです」
「だから今もですね」
「先生の夢の中にお邪魔しています」
そうだというのです。
「この様に」
「そうでしたか」
「はい、確かに拙僧は即身仏となり」
「お身体はですね」
「高野山にありますが」
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