セランVSライナ 前編
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目と口調は違った。
親友であり、ライバルであるリシャール・テイスティア。
けれど、一学年からの同級生である彼を、意識して、そして初めて嫉妬という感情を覚えたのは、きっと最初のシミュレーション大会だ。
アレス・マクワイルドの名前は、おそらくは上級生以上に下級生に伝わっていた。
曰く、賭け三次元チェスで常勝不敗。シトレ校長の身包みをはがしたことがある。
曰く、アレスが当直の時には抜け出すな。挑戦すると豪語していた五学年がいまだに行方不明らしい。
曰く、烈火と呼ばれている。燃え上ったら誰にも手が付けられない。
そんな人物から直々に訓練を受けられるなんて、羨ましかった。
でも、彼は変わった。
優しいのは相変わらずで、けれどしっかりと意見を言い、自分を見失わない。
強くなったよな。
それがアレスのおかげか、テイスティアの努力か、もはやどうでもいいことだ。
思い出を断ち切るようにセランは視線を強く向けた。
筐体の外、おそらくはこの戦いを見ている親友のもとへとだ。
一年前。
アレスに立ち向かった姿は、同学年のセランでも驚くものだった。
親友の成長は嬉しい――だが、どこかで悔しさが残っていた。
彼には負けたくないと。
そう思う感情を、セランは知っている。
ライバルと。
「負けるつもりはないよ」
親友であり、ライバルでもある薄暗い筐体の中で同級生を見て、視線をコンソールに移した。
その前に、こちらが先だと。
二学年の主席であるライナは、前回大会でセランと対等に戦いあった強敵で、同級生であるクローラーもまた油断をしてよい相手ではない。
数少ないヤン・ウェンリーの教え子として、堅実に、しかし時には驚かせるような戦術を使ってくる。今まで大会の決勝戦に残れなかったのはひとえに運なのだろう。
基本的な戦術をコンソールに打ち終えて、セランは一息。
画面にゆっくりと開始を告げる文字が現れた。
『開戦』
+ + +
攻略戦――対戦する相手は防衛戦にはなるが、何度か行われていれば、どうしても基本的な戦術パターンというものが生まれてくる。
防衛施設に対して個別に攻撃する。
分散して防衛施設を同時的に攻撃する。
あるいは、防衛戦と言いながらも防衛ラインの範囲外で艦隊同士が戦うこともある。
まだ学生という身分である彼らが主体となって戦術を考えることは難しく、どうしても防衛施設に対する攻略方法といった教科書に載った手順となるのは仕方のないことかもしれない。むしろ、偽装艦を使って敵戦力を引き吊りだし、本拠地を攻略するなどと考えるヤン・ウェンリーが異常であるのだった。
開戦の合図に、スクリーンの下でアレスたちは見上げている。
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