第十二章 魔法女子ほのか最終回 そして
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ごろごろと、はるかの身体が横に転がる。
転がる勢いで上体を起こし片膝をつくと、素早く顔を上げ、歯をぎりと軋らせながらきっと前方を睨み付けた。
だが、その視線は空をきった。ほんの一瞬前までそこに存在していたはずのものが、存在していなかったためである。
上!
何かを察したその瞬間、大きく横っ飛びしていた。
ほんのわずかでも判断が遅れていたら、はるかの頭は叩き潰されていたかも知れない。
真っ赤なブーツの踵が、ぶうんと風を切って振り下ろされてきたのである。
どむ。
低く重たい爆音。
地面が粉々に砕けて、間欠泉のように高く噴き上がった。
さらさら落ちる砂の雨の中、ダークシルバーの魔道着を着た魔法女子はるかは立ち上がると、改めて目の前に立つものを睨み付けた。
真紅の魔道着。
魔法女子、ほのかを。
唸る獣のように、鼻に筋を立て顔を歪めるはるかであるが、反対に、ほのかの顔にはまったく戦意というものが浮かんでいなかった。
地が噴き上がるほどの、とてつもない破壊力を見せたばかりだというのに。
それすら無意識の反応に過ぎなかったかのように。
赤毛の魔法女子、ほのかは、不思議そうな顔で、自分自身の手や足を眺めている。手を顔に近づけて、握ったり、開いたり。
「……全然、違和感がない。なんだか、生まれた時から、この身体だったみたい……」
呆けたような表情で、ほのかはぼそり呟いていた。
はっとしたように顔を上げると、その顔を、横へ向けた。
視線の先、地面になにかが落ちている。
倒れている、といった方が正解に近いだろうか。
何故ならそれは、赤いスカートから伸びる、ひからびて黒く変色した、人の足だったのである。
はるかのデスアックスに両断され、生気を吸い尽くされた、ほのかの下半身であった。
少し離れた場所には、やはりミイラ化して赤毛が頭皮から完全に抜け落ちた、ほのかの上半身が転がっている。
ほのかは目を見開き、瞳を潤ませた。
目をぎゅっと閉じ、顔をそむけるが、すぐ振り払うように首を左右に振ると、はるかへと向き直った。
はるかは肩を大きく上下させながら、唸り声をあげる狼のようにけわしく顔を歪ませていたが、ほのかの視線を受けると、にいっと唇の両端を吊り上げた。
「ディル バズム ラ ローグ」
小さく口を動かし、ぼそり呪文の詠唱をするはるかの右手に、いつの間にか不気味な黒光りを放つ幼児の身体ほどもある巨大な斧が握られていた。
はるかの魔装具、デスアックスである。
巨大な金属の塊だというのに、はるかは右手だけで楽々と柄を握り締めている。
「またさあ、おんなじ目にあ
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