15部分:第二話 受験の場でその三
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第二話 受験の場でその三
「拾ってくれて」
「ああ、それじゃあね」
「ええ」
この時はこれで終わりだった。だが彼は彼女の雰囲気は頭の中に入れてしまった。その楚々とした雰囲気、黒のロングヘア、垂れ目の奇麗な顔、それに胸が目に入ったからだ。
テストが終わり学園を出ると校門のところに星華が待っていた。すぐに彼に言ってきたのである。
「ねえ」
「ああ、どうだったか?」
「そうよ。どうだったの?」
こう彼に問うてきたのである。
「調子は」
「俺はいけたと思うよ」
顔と視線を少し上にやっての言葉であった。
「俺はさ」
「そう。いけたの」
「けれどな。こういうのって自分では思っていてもな」
こうも言うのであった。その顔と視線で。
「実は駄目だったってあるじゃないか」
「テストとかはね」
「だからどうかな」
あまり自信のない言葉であった。少なくとも自信を持たないようにしている言葉であるのは間違いなかった。
「実際のところは」
「そうなの」
「佐藤はどうなんだよ」
そして自分からもたずねるのだった。
「そっちはさ」
「私?」
「そうだよ。御前はどうなんだよ」
「あはは、まあね」
まずはバツが悪そうな笑いを出してから答える彼女だった。
「運を天に任せるっていうか」
「何だよ、それなのかよ」
「合格発表の時に全部わかるから」
こう言うだけであった。
「だからね」
「まあそうだけれどな。今わかることじゃないからな」
「だからね。斉宮」
「ああ」
「帰ろう」
また星華から言うのだった。
「今からね」
「そうだな。それじゃあ帰るか」
「ここにこれ以上いても仕方ないしね」
「いて合格するんだったらな」
ここでこんなことを冗談で言う陽太郎だった。
「どれだけでもいるんだけれどな」
「ふふふ、そうね」
彼のその言葉に合わせて笑う星華だった。そうしてだった。
「じゃあ本当にね」
「帰るか」
「そうしましょう」
こうしてであった。彼等はそのまま帰路につくのだった。それは他の面々も同じだった。椎名と月美もだ。二人共帰ろうとしていた。
その帰り道を二人で歩きながらだ。それで話をしていた。
「それでつきぴーはどうだったの?」
「どうかしら」
月美は椎名の問いに少し自信なさげに返した。二人は帰り道を横に並んで進んでいる。その中でのやり取りだった。
「正直なところ」
「自信はないの?」
「ちょっと」
こう言うのだった。
「ええと」
「そう。それでもね」
「それでも?」
「つきぴーは大丈夫よ」
椎名の表情はその変化が見えない。無表情であると言ってもいい。しかし今はその口元をほんの微かに綻ばせていた。そのうえでの言葉だった。
「絶対に」
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