149部分:第十一話 プールでその十六
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第十一話 プールでその十六
「ちょっとね」
「そうなの」
「誰かはなの」
「そういえばあいつ誰かと付き合ってたっけ」
既に電車は通り過ぎた。それでもまだ目に残っている残像を思いながらだ。そのうえで三人に対してその眉を少し顰めさせて言うのだった。
「そうだったかしら」
「初耳だけれど、それって」
「そうよね」
「あいつが誰かと付き合ってるって」
三人もだ。それを聞いて眉を顰めさせるのだった。
「そんなのあった?」
「あったっけ」
「ないよね」
「けれど確かに男だったわ」
それを思い出しての言葉である。
「あれはね」
「ううん、話がわからないっていうか」
「誰なんだろうね」
「男だとしても」
「あいつ男に媚びてるし」
これは完全に誤解だった。だがそれは星華、そして他の三人にとってはである。その中で事実として定着してしまっていることだった。
「誰か騙したんなら有り得るわね」
「それで援助交際とか?」
「そういうことしそうよね」
「そうよね、あいつはね」
「有り得るわよね」
その誤解のまま話すのだった。
「そんな奴だし」
「騙されてる男も馬鹿だけれど」
「けれど騙してるのなら問題よね」
「何企んでるのかしら」
「何か余計に腹が立ってきたわ」
星華は眉を顰めさせて言った。
「ちょっと家がお金持ちで頭がいいからってね」
「そうよね、顔もいいし」
「胸だって大きいし」
「それで男騙すなんてね」
「見てなさいよ」
星華はむっとした顔で述べた。
「懲らしめてやるんだから」
「そうよね、クラス委員の仕事もしないし」
「それで融通も利かないし」
「実質何もしないしね」
「それで男たぶらかして」
「見てなさいよ」
星華も三人も誤解したまま月美への反感を高めていく。だがそれがどうした結果になるかは。彼女達も全くわかっていなかったのだった。
第十一話 完
2010・5・22
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