第七十話 何進、姿を現すのことその五
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「わらわはこのまま曹操のところに身を寄せるつもりじゃが」
「そうみたいだな」
「そうじゃ。曹操の本拠地の城はもうすぐじゃ」
地理のことはだ。頭の中に入っているのである。
「だから向かっておるのじゃが」
「曹操殿のところもいいがな」
「よりよいところがあるのじゃな」
「だからここに来た」
こう何進に話す華陀だった。
「そういうことだ」
「ふむ。では袁紹のところか?」
まずはこう考えた何進だった。
「若しくは孫策、袁術か」
「その四人のところに行くのも悪くない」
華陀はそれ自体はいいとした。
「四人共絶対に貴殿を匿ってくれる」
「そのうえで兵を起こし宦官達をじゃ」
何進はこう話しながらだ。目を怒らせるのであった。
「今度こそ一掃してやるわ」
「それねえ。気持ちはわかるけれど」
「あの人達処刑されたって話があるわよ」
あえてだ。二人はその宦官達についてはこう説明するのだった。
「今洛陽は董卓さんが掌握しているわよ」
「状況が変わったのよ」
「何っ、それはまことか!?」
それを聞いてだ。思わず驚きの声をあげた。彼女の知らないことだったからだ。
「董卓がか」
「貴殿は董卓のことはよく知らないんだな」
「うむ。確かにわらわについてはいたが」
それでもだというのである。
「それでもじゃ。中央から距離を置いていた故にじゃ」
「よく知らないんだな」
「しかし暴虐の者ではない筈じゃ」
このことは何進も知っていた。
「色々よくない根も葉もない噂があるがじゃ」
「とにかくその董卓が今都を掌握している」
また何進に話す華陀だった。
「宦官達はな」
「ふむ。ではわらわは匿われてそれで終わりじゃな」
話を聞いてだ。何進は自分のこれからのことを察した。
そのうえでだ。こう言うのであった。
「大将軍には戻れぬか」
「どちらにしろそうね」
「貴女の天命はもう官位とは関係なくなっているわ」
「左様か。なら仕方あるまい」
怪物達の話を聞いてだ。何進は達観した様にして述べた。
「大将軍として国を正しくしたかったが」
「それはまたね」
「他の人がやる運命にあるから」
「わかった。ではそれならそれでよい」
己の運命を素直に受け入れた何進だった。その顔には未練がない。
「また肉屋に戻るだけじゃ」
「それでいいんだな」
「うむ。それも気楽でよい」
肉屋もだ。悪くないというのである。
「どのみちそちらでそこそこ繁盛しておったしのう」
「これからはそうするのね」
「そちらで生きるのね」
「そうさせてもらう。しかしじゃ」
ここでだ。何進は再び怒った顔を見せてだ。こう三人に話すのだった。
「それもこれもじゃ。まずはじゃ」
「そういえばその頭巾はどうしたんだ?」
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