147部分:第十一話 プールでその十四
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第十一話 プールでその十四
「だから結果として」
「そうか。しかし意外だな」
陽太郎は椎名の話を聞いてだ。腕を組んで述べた。
「チャイコフスキーってホモだったんだな」
「それを咎められて殺されたって説もあるから」
「そうした話もあるのか」
「そう、それで」
「オスカー=ワイルドもそれで捕まったしね」
また赤瀬が言ってきた。
「昔のヨーロッパはそうだったよね」
「同性愛は御法度だったから」
「そこが日本と違いますよね」
月美は日本の話をしてきた。
「それは」
「ああ、織田信長とかな」
「武田信玄も上杉謙信もよね」
狭山と津島が戦国大名の代表的な三人を話に出してきた。
「あと平安時代も普通だったよな」
「江戸時代でも」
「日本ではそれで捕まった人も死刑になった人もいない」
椎名はこの事実を指摘した。実はそうなのである。
「今でも」
「だよな。っていうか捕まることでもないだろ、それって」
陽太郎は腕を組んだまま述べた。
「俺はそっちの趣味はないけれどな」
「だといいけれど」
「女の子だけだよ」
これは確かに言うのだった。
「それはな」
そんな話をしてからまた少しプールで遊んでだ。三時頃にプールを出た。六人共満足した顔でそこを出てだ。駅に向かったのだった。
「じゃあな」
「これでね」
まずは狭山と津島が笑顔で別れた。四人に手を振って彼等の電車に乗る。
そして椎名もだ。まず赤瀬に声をかけたのである。
「赤瀬」
「うん」
赤瀬は彼女の言葉に応えてだ。そうして言うのだった。
「それじゃあね」
「行こう」
椎名から言ってだ。そのうえで二人も二人の電車に向かった。
その時にだ。最後に残った陽太郎と椎名の方を振り向いた。口元が微かだが綻んでいるように見えた。その顔での言葉だった。
「じゃあ」
「あ、ああ」
「また学校でね」
「後はごゆっくり」
今度はあからさまだった。顔が微笑んでいた。
その顔を見せてだ。赤瀬と共に姿を消した。そうしてであった。
陽太郎は二人きりになるとだ。それでだ。
月美に声をかける。それから。
「あのさ」
「はい」
「ええと、これからだけれど」
「どうします?」
「何かプールで一杯泳いだし」
自分でもわかった。言葉がたどたどしくなっていることがだ。だがそれでも言わずにはいられなかった。それが今の彼の置かれた状況だった。
「疲れたけれど」
「それでもまだ時間がありますよね」
「何処か行く?」
陽太郎はこう月美に言った。
「それじゃあ」
「何処かですか」
「西堀の好きな場所でいいからさ」
陽太郎は温かい顔で述べた。
「どうかな、それで」
「そうですね。それじゃあ」
「うん、じゃあ」
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