143部分:第十一話 プールでその十
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第十一話 プールでその十
「だからな」
「そうですよね。かなり」
「あれで何もかも考えているしな」
「はい」
「じゃあそれに乗るか」
こうしてであった。陽太郎も頷いてだ。
あらためて月美に言うのである。
「これからさ」
「はい、一緒に泳いでいきましょう」
「うん、じゃあな」
こんな話をしてそのうえでジャングルプールの中を泳いでいく。そうして様々なプールを巡りそこから出た時にはだ。確かにいい時間になっていた。
そして滑り台のところに行くとだ。そこに椎名がいた。赤瀬も一緒だ。
「どうだった?」
「ええ、楽しく過ごせたわ」
月美がにこやかに笑って椎名の問いに応えた。
「とてもね」
「それならいい」
それを聞いて満足した顔で頷く椎名だった。
「それなら」
「そうなの」
「こんな奴でも役に立つ」
陽太郎への言葉だった。
「だからいい」
「そりゃ俺のことかよ」
「そう」
実際に陽太郎にも言う椎名だった。
「オーチンハラショー」
「何でここでロシア語になるんだ?」
「言ってみただけ」
いつもの蒲鉾を逆さまにしたみたいなやぶめになった目での言葉だった。
「気にすることはない」
「相変わらず何考えてて言うかわからない奴だな」
「けれど丁度いい時間だよ」
ここでまた上から赤瀬の声がした。
「それじゃあ後は」
「もう狭山と津島は待ってるから」
「あっ、そうなんだ」
「そう、テーブルのところに行こう」
こう陽太郎と月美に言ってだった。そのうえで店が並んでいる場所に行く。そこの六人席にはもう狭山と津島が待っていた。席に座ってそこから四人に手を振ってきた。
「よお」
「こっちよ」
「ほら、待ってるよね」
「そうだな」
陽太郎は赤瀬のその言葉に応えた。テーブルの上にはもう弁当が置かれていた。その津島の作ったサンドイッチと月美の作ったお握りがだ。
椎名はそれを見てだ。静かに言うのであった。
「食べよう」
「ああ、じゃあな」
「食べましょう」
陽太郎と月美が彼女に応えてだった。そうしてだった。
六人で楽しく食べる。そのお握りの味はだ。
「あっ、これ」
「美味しいわよね」
「そうだよな」
狭山と津島、そして陽太郎が最初に声をあげた。
「中に入ってるおかずも色々だしよ」
「海苔も塩加減もいいし」
「ああ、美味いよこれ」
「美味しいですか?」
作った本人がここで三人に問うた。誰もがそのお握りを手にして食べている。それを見ての問いであった。彼女だけがお握りを食べていない。
「私のお握り」
「ああ、美味いよこれ」
陽太郎は目を丸くさせていた。
「へえ、中におかかが」
「おかか好きでして」
「こっちはタラコか」
「鮭もあるわね」
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