142部分:第十一話 プールでその九
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第十一話 プールでその九
「泳ぐのもさ」
「そうですか」
「うん、それでだけれどさ」
また言う陽太郎だった。二人で横に並んで平泳ぎをしている。そうしながらプールの中を進んでいく。そのプールを少しずつ進んでいく。
「プールとプールが水路でつながってるんだ、ここって」
「そうですね。ですからボートを借りることも」
「できるってことか」
「そうですね。それでなんですけれど」
「それで?」
「ここを出たら丁度いい時間ですね」
「ああ、お昼なんだ」
時間のことは忘れてしまっていた。泳ぐのとプールのことに夢中でだ。
それでそのことを思い出すとだ。その途端にだ。
「何かさ」
「何か?」
「お腹空いてきたし」
「あっ、もうですか」
「何か空いてきたよ」
また言う陽太郎だった。
「お昼のことを考えたらさ」
「そうなんですか」
「西堀のお握り楽しみにしてるしさ」
「有り難うございます」
笑顔で陽太郎の笑顔に応える。同じ笑顔になっていた。
「それじゃあお昼を目指して」
「泳ぐか」
「そうしましょう」
こう笑顔で言い合ってそのうえでプールの中を進んでいく。時々ボートが来るがそれも避けてだ。そうしてそれぞれのプールを進む。
その中でだ。時々カップルを見る。彼等はプールの中でかなりいちゃいちゃしていた。
月美はそれを見てだ。顔を赤らめさせていた。そしてだ。
「何か」
「何か?」
「皆さん凄いですね」
こう言うのだった。どのカップルも水の中で身体を寄せ合っている。そのうえでいちゃいちゃとして明るい笑顔で居るという訳なのだ。
「何か」
「凄いね、確かにね」
「あんな風に」
「プールってデートスポットらしいしね」
「えっ、そうなんですか」
「うん、そうらしいよ」
こう月美に話すのだった。やはり横に並んで泳ぎながらだ。
「実際にね」
「プールがですか」
「プールってどういう場所だと思ってたの?西堀は」
「泳ぐ場所じゃ」
実に率直な返答だった。
「それだけだと」
「思ってたんだ」
「それが違うんですね」
「結局どんな場所でもデートスポットになるらしいよ」
これは本で知った知識なのでこうした言葉遣いになっていた。彼にしてもこうしたデートの経験は浅いので今一つ弱いのである。
「二人でいられる場所ならね」
「それならなんですか」
「みたいだね。それで」
「それで?」
「特にプールはね」
そこはだというのだ。
「ほら、水着になるじゃない」
「はい」
「だからとりわけそうなるらしいね」
「それでなんですか」
「若しかしてあいつ等、っていうか椎名だよな」
「愛ちゃんですか」
「そういうことわかっていたのかな、やっぱり」
こう考えたのであった。
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