戦いの前に
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を悟ったように。
「まあ。気づいたようだけど。これは私たちの意見だけではなく、もっと複雑な事情があってね。ジャン・ロベール・ラップ大尉を覚えているかい」
「ええ。先輩方の中では一番の常識人ですね」
「肯定しにくい感想をありがとう。本来はラップがそこに入る予定だったんだ。ところが体調を崩してね、代わりをということで私たちも探したわけだけれど」
「そこでシトレ大将が学生のたわごとを覚えていたというわけだ」
残念だったな、後輩とアッテンボローが肩をすくめた。
「装備企画課に異動して、まだ半年も経っていないのですけどね」
「この件はセレブレッゼ少将も是非にと二つ返事で許可を出したそうだ」
「そこまで嫌われるようなことは……まあ、数年分の仕事を二か月くらいでセレブレッゼ少将に押し付けはしたかな」
「十分すぎだろ」
「セレブレッゼ少将も本当は出したくないとは前置きをされたようだ。ただ前線に人が足りないことも理解してくださっている。そして、君ならば活躍できると……昇進の話も、セレブレッゼ少将が強く推薦してのことだ」
「一体、何人の期待を背負わせるおつもりで」
「なに。心配いらん」
それまで腕を組んで黙っていたワイドボーンが再び力強く言った。
「その道は作ってやると言っただろう。俺を誰だと思っている」
「そういう意味だったなら、断れば良かったですね」
堂々とした言葉に、アレスは諦めたようにため息を吐き、手にしていた缶紅茶を飲みほした。
「わかりました。詳しい話は正式に異動の話を受けてからにしましょう。こちらもいろいろと考えておきます。さて、つまらない話はこの辺りにして、今日の目的を見に行きましょう」
+ + +
準決勝。
五学年次席セラン・サミュールと二学年主席ライナ・フェアラート。
どちらも戦術シミュカルチョで順当に勝ち上がってきたチームだ。
とはいえ、昨年のように絶対の本命がいないこともあって、分散はしているようだが。
それぞれの筐体の正面には、大型スクリーンモニターが設置され、多数の学生が集まっている。
すでに戦うメンバーたちは筐体の中に入っているようだ。
今頃、勝利条件や装備の配分を行っているのだろう。
わずか一年前のことではあるが、懐かしくも思えるし、まだ学生のような気もする。
ま、少なくともこのタイミングでイゼルローン云々なんて話をしているとは思いもしなかったが。
やがて、室内灯がゆっくりと消えていく。
中央の巨大スクリーンの明かりだけが強く輝いており、今回の舞台となる戦場を映していく。
「ほう」
と、呟いたのはワイドボーンだ。
その隣ではヤンもどこか懐かしそうな様子だ。
最もその懐かしさの奥にある感情までを、アレスは読み取ることはで
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