戦いの前に
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のですけれど」
「無理だな。アレス・マクワイルド中尉。お前は来年2月で昇進ののちに、第八艦隊司令部作戦参謀としてヤン少佐とアッテンボロー中尉とともに勤務することになる」
「え、だめですよ」
即答したアレスの言葉に、拳を机に叩きつけて力強く言ったワイドボーンが目を開いた。
「私はフェザーンの駐在武官の希望試験に合格しましたから。来年四月にはフェザーンです」
その言葉に。
「お前は、何を言っている」
ワイドボーンが顔を歪めた。
+ + +
セレブレッゼの意味深な発言の直後、アレス・マクワイルドの動きは早かった。
フェザーン駐在武官。
それは人事部で毎年希望をとって、割り当てられる場所だ。
とはいえ、自由惑星同盟においてフェザーン駐在武官をあえて希望する者はほぼいない。
安全であることは確かであるが、現代での大使館といった外交政策等の重要性はほぼ皆無な現状においては、あまりにも軽視され、冷遇されている部署だ。
配属されたからと言ってその後に特別に面倒を見てもらえるわけでもない。
戦闘があるわけでもないため、栄達も望めない。
そもそも国とすら扱われていないため帝国と調整などの外交的な活躍があるわけもない。
希望性とはしているものの、実質は軍で持て余して配属されることの方が多い。
もっとも、希望が少ないとはいえ、アレスが希望してから決定までに時間が早いのは事実。
「優秀な人事にコネを持つと、非常に助かりますね」
しかし、そこで人事部の――ある個人との利害が一致した。
装備企画課で何もさせないつもりが、たった数か月で大きな成果を生みだされた。そんな人間が、どういうわけかまず活躍することなど皆無であるフェザーン駐在武官を希望してきている。
見てはいないが、高笑いが聞こえたようだった。
「まことに残念ですが」
まったく残念ではなさそうに、アレスは首を振った。
だが。
「それは一旦凍結させてもらったよ、マクワイルド中尉」
たった一人、この場にはアレスよりも上手の人間がいた。
「人事にはコネがなくても、コネを持っている人は他にも多くいるからね。その辺りを固めなければ、こうして話すわけもないだろう」
まだまだ甘いねと微笑をするヤン・ウェンリーに、初めてアレスは顔をゆがめた。
仮に彼らが知ったのがこのタイミングであれば、いかに上層部と言って止めることはできなかったはずだ。
一中尉の人事など、気にする人間があろうはずもない。
既に決まっているのであれば、それこそフォーク辺りが意気揚々と代わりにと、向かったかもしれない。
それが動きまで察知され、人事の凍結まで持ち出してきている。
ヤンは缶紅茶を一口飲んだ。
アレスの苦い表情の意味
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