戦いの前に
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ンは興味深そうに頷き、一拍をおいて口を開いた。
「並行追撃はどうかな」
「そうですね」
アレスは少し考えたふりをした。
それは結果的に悲劇に終わった戦術だ。
まさかこの時点で、誰もが味方事トールハンマーの餌食にするとは理解できないだろう。
最もイゼルローンを奪われることになれば、下手をすれば断罪される。
ましてや宇宙艦隊と仲が良いわけでもない。
それならば奪われるくらいなら、やってしまおうと考えてもしかるべきかもしれない。
味方殺しというのは軍人にとっては考えつかないかもしれないが、過去には多くの事例があるのだから。
「イゼルローンの占拠ではなく、破壊を目的とすれば、可能性はあるかもしれませんね」
「馬鹿。それだとイゼルローン要塞が使えなくなるだろう?」
「少なくともイゼルローン要塞の攻略という目標は達成できていると思いますけれど」
「戦術的には大丈夫でも、戦略的にはどうなんだ、それは」
「イゼルローンがなくなれば、帝国の侵攻は難しくなりますよ。補給基地が帝国側にしかなくなるわけですから」
「それはこちらもそうだろう」
「後方勤務本部の意見を言わせていただくと、今の同盟の予算状況で、侵攻まで求められても困りものですよ。個人的にも後方勤務的にもイゼルローンはなくしてもらいたいですね」
「言わんとしていることはわかるが」
歯に衣を着せぬアレスの言葉に、アッテンボローとヤンは顔を見合わせる。
ワイドボーンだけが、腕を組んだままむむっと小さくうなった。
「それじゃあ、戦争は終わらないだろう」
「そもそも総戦力で負けている時点で、侵攻して終わらせるとか無理でしょう。それが可能になるのはこちらの戦力が帝国軍を大きく上回るか、もしくは少しずつ力をそぐか」
「お偉い方は我々が帝国に行けば、帝国市民はもろ手を挙げて歓迎してくれると思っているようだけれど」
「人はパンのみで生きるのではあらず――とはいえ、パンがなければ生きることもできない。ま、私は理想を述べる宗教家よりも、お金をくれる人にほいほいついていきますけれど」
「けれど、上の意見はそうではないようでね。イゼルローン要塞も並行追撃作戦を行い、占拠を目指すらしい」
「ご愁傷さまです。でも、そこまで私に話しても。明らかな機密の漏洩ですよ」
「何、他人事みたいにしている」
「それは」
他人事だからと言おうとしたアレスの目に、にやにやとしたアッテンボローの表情に入った。
その様子に彼らが何を伝えようとしているかは理解できた。少なくともワイドボーンはともかくとして、ヤンやアッテンボローが作戦計画をアレスに教えるほどには、彼らと親しくした記憶はない。
「他人事で同盟の機密を聞けると思っていたのか」
「できれば他人事でいたい
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